2009.07.24 Friday

NHK連続テレビ小説 「芋たこなんきん」

年をとってもずっとおしゃべりができる夫婦っていいなあ。
作家田辺聖子さんの半生をドラマ化した「芋たこなんきん」。これはそのノベライズ版です。

昭和40年代、BG(当時のOLの呼び名)をしながら作家修業をしていた花岡町子は、ひょんなことから知り合った医者・徳永健次郎にプロポーズされる。返事を保留にしていた町子だったが、その間に大きな賞を取り、作家として忙しくなってしまう。
結婚したら仕事も家のことも中途半端になってしまう、とためらう町子に健次郎は「中途半端と中途半端をトータルしたら人生満パンやないか」と言い、二人は結婚することに。

しかし、妻に死なれた健次郎には両親・妹のほか中学生を頭に5人の子供たち、その他にも風来坊の長男・昭一がおり、たくさんの家族に囲まれ、作家業・主婦業・子育てにてんやわんやの生活がはじまった…
町子と健次郎は時おり口ゲンカをしながらも
毎日飽きずに飲んで、食べておしゃべりを楽しんでいます。

健次郎さんのプロポーズがすてきでした。
中途半端と中途半端をトータルしたら人生満パンやないか

結婚て他人同士が添うわけですから、そりゃ大変なこともありますよね。でもこんなすてきな言葉をかけてくれる旦那さんと、おしゃべりして、おいしいものを食べて、お互いの仕事に励むことができたら、毎日楽しいだろうな。それにはきっと、「何事も楽しむ才能」が必要で、町子さんはその才能をもっているんですね。

実際、田辺先生は旦那様とよくおしゃべりをして、それが作品にもいい影響になったのだそうです。有川先生も旦那様の後押しで作家になる決意をしたというし、すばらしい作家にはすばらしいパートナーがつくようになってるんですね。

NHK連続テレビ小説『芋たこなんきん』上巻
NHK連続テレビ小説『芋たこなんきん』上巻
NHK連続テレビ小説『芋たこなんきん』下巻
NHK連続テレビ小説『芋たこなんきん』下巻

「孤独な夜のココア」→
「おちくぼ姫」→
「ほどらいの恋」→
「ジョゼと虎と魚たち」→

2009.05.25 Monday

「食堂かたつむり」 小川 糸

食堂を舞台にした小説といえば、食事と働く喜びと癒しをテーマにした「かもめ食堂」が思い浮かびますが、「食堂かたつむり」は同じ食堂を舞台としていても、そのアプローチの仕方は全く異なります。

ストーリー
主人公の倫子は、恋人に荷物をすべて持ち逃げされ、たったひとつのこった祖母の形見のぬか床を手に、故郷に帰る。
長い間不仲だった母に頼みこみ、実家の片隅で食堂かたつむりをオープンする。彼女のつくった料理はやがて評判をよび、人々に喜びを与えるようになる。


料理を通じて生と死という厳粛なテーマを、やさしい料理と田舎の美しい風景をベースに書かれていて、読んでいて「癒される」というよりは「考えさせられる」に近いお話でした。
終盤、かわいがっていた豚を主人公が自ら屠り、食材にかえていく場面は厳粛で神聖な雰囲気さえ感じられます。

食べるということは他の生物の命をいただくこと。

そんな当たり前なのに、忘れていた、あるいはフタをしてきた現実を改めて考えさせられる作品でした。


ただ、ストーリーが少し強引な部分もあるかなと。
私は料理が下手なせいか、ここまで料理に対して盲信的な主人公にいまいち共感できなかったし、いきなり奇跡的に人々を救う料理を作れるって設定や、親子の確執の溶け方もいきなりすぎる気もするんですが。。

食堂かたつむり
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食堂かたつむりの料理
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2008.11.05 Wednesday

「沖で待つ」 絲山 秋子

沖で待つ」を読んだきっかけは、恋愛と違う会社の同僚同士という絆に引かれたからです。
わたしは今まで中小企業でしか働いたことがないので、同期と呼べる人はいませんでした。会社の人間はみなライバルだと思ってたし、信頼して約束を結ぶ相手を作ることができなかった。
仕事で失敗したり、みっともないところを見られている分、気の置けない太っちゃんと主人公みたいな関係がうらやましかった。


【ストーリー】
会社で気の置けない同期だった「私」と太っちゃんはある約束をする。それはどちらかが先に死んだらお互いのパソコンのハードディスクを破壊するというものだった。
その約束は思いがけず早く実現することになった。
太っちゃんが突然、事故に遭い、死んでしまった。
「私」は、約束を果たすべく、前もって作った合鍵で太っちゃんの部屋に向かう。

会社という組織でなければ成立しない関係。
恋愛でもない、家族愛でもない、友情とも微妙にちがう。
しいて言えば同志、仲間みたいなものだろうか。
相手にもよるでしょうが、同期に限らず会社の同僚というのは家族よりも長い時間を一緒にすごしているわけだから、家族とはまた違う種類の絆を結べるのかもしれません。

同時収録の「勤労感謝の日」は、近所のすすめで見合いをすることになった求職中の元総合職の女性の1日。
ムカつく相手との見合いを途中でばっくれ、後輩と飲みに行って憂さをはらす。
将来のビジョンもなく、いろんなことにムカついている女性なんですが(^^;)、不思議と嫌な気はしませんでした。人生をひねくれていてもどこかあきらめていないような感じがするからでしょうか。これから彼女がどんな人生を歩いていくのか続きを読んでみたい話でした。

沖で待つ
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JUGEMテーマ:芥川賞・直木賞

2008.10.16 Thursday

「雨の日も、晴れ男」 水野 敬也

夢をかなえるゾウ」の作者が送る超ポジティブ小説、「雨の日も、晴れ男」

主人公・アレックスはイギリスに住む平凡な男。
天界に住む小さな神様・シュナとワンダーのいたずらによって
どんどん不幸な出来事に遭遇してしまう。
しかし、アレックスはどんな不幸にもめげず、常にユーモアをもって対処していく。業を煮やしたシュナとワンダーはさらにエスカレートして次々と不幸な出来事をアレックスに起こすのだが…

賛否両論が分かれそうな小説です。
主人公が担当する製品が日本のKOKESHIだったり、相手先に謝りに行く時にSUSHIに見立てたDOGEZAだの、日本をおちょくったテンションには正直あまりついていけませんでした。(^^;)
これほどまでのポジティブ思考は実際には無理があるだろうし。

でもどんな困難にもアレックスは持ち前のユーモアで明るく乗り切ろうとしていくところはやっぱり感動しちゃっうんだな。
特に印象深かったのは、円形脱毛症ができてしまった時、ハゲた部分にカツラメーカーの広告をいれるというもの。
ハゲ=ネガティブな印象をひっくり返した面白いアイデアだと思いました。

会社をクビになり、詐欺にあい、すべてを失っても、アレックスは常に自分以外の誰かを楽しませることで前向きに不幸な出来事に向かっていった。
物語の最後にこんな言葉がでてきます。
神様は幸・不幸を与えることはできない。出来事を起こすだけ

幸福も不幸も人間が決めることができるってこと。
アレックスみたいな超ポジティブにはなれそうもないけれど、「不幸」を出来事としてとらえることができるなら、「幸福」を見つけやすくなるのかもしれない。

「夢をかなえるゾウ」
「夢をかなえるゾウ2 ガネーシャと貧乏神」


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JUGEMテーマ:オススメの本


2008.08.29 Friday

彼女を守る51の方法―都会で地震が起こった日

防災の日が近づいてきました。
防災の日は毎年わが家で防災グッズの点検を行っています。
食料はなんとかなるにしても、一番困りそうなのは
水とトイレ。
一応組立式簡易トイレもリュックに入れてありますが、はたしてこれで足りるかどうか…

また、勤め人の場合は防災グッズのそろった家より
職場にいる時間が当然長いため、外出先での防災を考えなければ
なりません。私はLEDライトとホイッスル付のキーホルダーを持ち歩くようにしています。
あと、どんなに暑くても絶対にサンダルをはいて外にでない。
ガラスの破片、こわいですからね(((; ゚д゚)))

彼女を守る51の方法は、主人公(読者)が彼女と一緒に街にいる時地震に遭遇し、彼女を守りつつ安全な場所まで非難するシュミレーション形式の写真本です。
地震の発生から、情報収集、食料の確保、避難所への避難、
心理ケア、防災ライフスタイルなど、防災生活に必要な知識が
取り上げられています。
そしてやっぱりここでもトイレ問題が。(^^;)

鹿男も、**眼帯をした公務員もいない現代日本では
こうした本で知識を貯え、自分自身できたるべき災害に備える覚悟が必要なのかもしれません。

「彼女」役の女の子がすがるような目でこちらを見る写真は
女の私でも「なんとか彼女を守らねば!」というナイトのような気分になります。

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防災頭巾も買おうか検討中。


鹿男あをによし
**諸星大二郎 「**詔命」より。
眼帯の公務員がある日地震予防課に配属されるが…

2008.08.10 Sunday

「ドスコイ警備保障」 室積 光

都立水商!に続く 奇想天外な室積ワールド、今回も炸裂してます。
今回は引退した力士の再就職先として
つくられた警備会社、「ドスコイ警備保障」をめぐる
元力士と会社設立に携わるメンバーの物語。

・ドスコイ警備保障設立


水商売のための商業高校を描いた「都立水商!」もそのアイデアにびっくりしましたが、「ドスコイ警備保障」も力士による警備会社というありそうでなさそうな会社をつくりあげてしまいます。

お相撲さんて、強いけれどもどこか動作がゆったりしている印象があるのですが、実はトップスプリンター並の瞬発力と強靭な筋肉を持つ格闘家なのですね。(近距離のスピードならカール・ルイスよりも上回る力士がいるらしい)
そんな格闘のプロ集団が警備を行うんですから、ちゃらい犯罪者などはひとたまりもありません。ボッコボコの返り討ちにあってしまいます。(^^;)
いつしか、「ドスコイ警備保障」は「警察官立ち寄り所」よりも効果のある犯罪抑止力となってゆくのでした…。


・全員が主人公


普通のドラマなんかだと
会社設立→順調→ものすごい困難がやってくる→克服して大団円
という流れになるんでしょうが、室積さんの話はすこし
違うんですね。
会社設立当初は困難があるものの、きっかけをつかむとドスコイ警備保障は順調に成長をとげていきます。
「困難」の変わりになるのは、ドスコイスタッフひとりひとりへのスポットライト。

ドスコイ警備保障の社長となった豪勇と親方との関係。
ちょっとドジだけれど、会社思いの設立スタッフ、近藤と
山本、井上。
会社の紅一点で元タレント事務所社長の敦子。
もともと別の会社の社員だったのに、デブということで
いつの間にか「ドスコイ警備保障の」一員になった松村君。
そんなキャラクターひとりひとりのエピソードを丁寧に
描いているんです。それが笑いあり涙ありで、気がつくと自分もドスコイ警備保障の一員になったような気分で読んでいました。
だから、主人公とよべる人間は存在しない。
「ドスコイ警備保障」に関わる全員が主人公といえるかもしれません。

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2008.07.16 Wednesday

「深海のパイロット」 藤崎 慎吾 田代 省三 藤岡 換太郎

有川浩先生の「海の底」で、参考文献として巻末に挙げられていた本です。
通常、こういった専門書は専門用語だらけでおもしろくないかと思いきや、わかりやすいことばで書かれていて素人にもわりあい読みやすい内容でした。
文中には、深海探査船で録音されたパイロットや研究員達のナマの声がそのまま掲載されている箇所があり、ブラックスモーカー(高温の水と硫化物の噴出口)を発見したときの興奮の様子が伝わってきます。

私が印象に残ったのは、深い深い深海にも、人の捨てたビニール袋
や空き缶などが発見されている事実。人間の影響が深海にも及び始めているんですね。
中には変わったものもあり深海6000メートルにあったのはなんとマネキンの首。それもどうやら「南極にもっていった」やつらしい…(^^;)
光のささない深海にマネキンの首。発見したときはびっくりしたでしょうね。

こうした人類の悪影響が徐々に深海に及ぶようになると
レガリスの出現も小説の上でだけではすまなくなってくるのかも…

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2007.05.30 Wednesday

「しゃべれどもしゃべれども」 佐藤 多佳子

本屋大賞を受賞した「一瞬の風になれ」もすばらしかったけれど、この本もすばらしかった!
だいたいにおいて私の好きな作品か、そうでないかは、その作家の最初に読んだ作品と、2作目で決まるんです。
この人は、「一瞬の風になれ」で強烈な印象を残し、読書2作目で完全にわたしの心をとらえてしまいました。

私のこれからの人生に、佐藤 多佳子作品を読む楽しさが加わった。これはとてもうれしくて、楽しい。

物語は、しゃべりのプロである落語家・三つ葉のもとに、対人恐怖気味のテニスコーチ、話すのが苦手でつっけんどんな美人、関西弁のためいじめにあう小学生。話が苦手な元プロ野球選手などが集まり落語を教える羽目に。

みんな、誰かにうまく伝えたくて、それができずに苦しんでいる。
けれど、みんな苦しみながらも何とかしたいと思っている。
わたしも、会社の人たちにうまく伝えられなくて、いつも悔しい思いをしているので、落語教室に集まった面々の孤独とか寂しさに共感するところが多かった。・゚・(*ノД`*)・゚・。。

「言葉」で人とつながる難しさと、面白さ。
それを体感する事のできた物語でした。

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映画「しゃべれどもしゃべれども」→

しゃべれども しゃべれども 特別版 (初回限定生産2枚組) [DVD]
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佐藤多佳子作品感想
「一瞬の風になれ 第一部 -イチニツイテ-」→
「一瞬の風になれ 第二部 -ヨウイ-」→
「一瞬の風になれ 第三部 -ドン-」→
「第二音楽室」→

JUGEMテーマ:小説全般


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