2013.11.19 Tuesday

まんまことシリーズ 「ときぐすり」 畠中 恵

町名主の息子麻之助が、町内の揉め事を解決する「まんまこと」シリーズ4作目の「ときぐすり」では、傷心の麻之助がどうやって傷を癒していくかを様々な事件を通して描かれます。

前回麻之助は、愛しい妻と子を亡くし、一時は目を離せない状態でしたが、今では以前の道楽息子にもどり、親には嘆かれるものの、仕事をさぼって愛猫・ふにと遊ぶくらいまで元気を取り戻しています。

それでも時々、亡き妻の親戚の娘・おこ乃を妻と間違えてしまったりと、まだ傷は完全には癒えていないようですが…。そんな傷心の麻之助の元には、傷を癒やす間もないほど、たくさんの事件が持ち込まれてきます。
幼なじみの清十郎が行方不明になったり、同じく幼友だちだった堅物の同心見習い・吉五郎に恋の噂、おまけに猫まで行方不明になり…。

ときぐすり


個人的には、これが一番好きな話です。町内で流行病があり、その後処理に負われる麻之助の前に、ある日滝助という少年が現れるます。滝助は盗賊の下働きをしていた少年で、一味が散り散りになり、食べていくすべを探していたのです。幸い、悪さはしていないので、長屋で息子をなくした職人と、一人暮らしのばあさんに面倒を頼むのですが…。

「ときぐすり」とは「時薬(お坊さんの食事に関する用語)」を滝助が読み間違えたものですが、麻之助や長屋のものたちにも、時は新たな出会いを呼び、少しずつ哀しみを癒してくれます。

今回、可愛かったのは、頼まれて出稽古に行く吉五郎の婚約者の女の子が、まだ子どもだけれど、可愛らしいヤキモチをやいて吉五郎の外出をとがめるところ。でも朴念仁の吉五郎は全然そんなことに気がついていないんです。なんとも愛らしい夫婦になりそうです。

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まんまことシリーズ


「かわたれどき」
「まったなし」
「ときぐすり」
「こいしり」
「こいわすれ」
「まんまこと」
JUGEMテーマ:オススメの本

2013.08.04 Sunday

英国版メイドはつらいよ。 「図説英国メイドの日常」 村上リコ

英国メイドマーガレットの回想」から、19世紀末から20世紀にかけての英国メイドの実態についての本を読んでいます。森薫さん原作のアニメ「エマ」の監修をつとめた村上リコさんがまとめた「図説英国メイドの日常」は、メイドたちの言葉や数々の資料から、当時のメイドがどんな風に働き、生きていったのかをまとめた本です。

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漫画『エマ』のようにはいかない、英国メイドのリアル・ライフ


英国メイドを主人公にした漫画「エマ」は、紳士階級とメイドの恋と、当時のメイドたちの生活が描かれていますが、実際に19世紀から20世紀初頭の英国メイドの仕事は、漫画よりもかなりハードな印象を受けます。

前に読んだ「英国メイドマーガレットの回想」にも書かれていましたが、ひどいときは一日数十時間に及ぶ肉体労働をこなさなければならず、それもクリスマスやパーティーなどがあると、超過勤務になるし、主人からくだされるクリスマスプレゼントは実用的で、嬉しくもなんともない…など、メイドたちの声が取り上げられています。

あるメイドは、1日のうちでとてもこなせないであろう作業表をみて、主人にとってメイドとは
時計のようななめらかなリズムで動く、よく油をさした機械に似たなにか
だと感じます。

しかしメイドの職場環境は、仕える家の大きさによっても左右され、貴族の邸宅などでは、使用人たちに十分な食事をさせて、良い環境ではたらかせること自体をステータスと考えていたので、中流家庭よりも恵まれていたようです。けれど、そうした上流の家庭で働くためにはそれなりのキャリア、もしくは紹介状が必要なのですが…。


英国メイドの恋と生活


メイドとして働く女性たちは、大抵が貧しい子だくさんの家の娘達で、父親が失業をしている場合が多く、過酷な労働で得た少ない給金の中から、彼女たちは家計を助けるために給料の殆どを親に仕送りしています。

メイドは職種によって給金以外の収入(チップや食材の獣の毛皮などの換金、商店からの賄賂)があったため、そうしたお金で洋服をしたてたりしていたようです。

下級メイドは自分の身の丈にあった商人や軍人などを見つけ、結婚することでつらい労働から開放されますが、主人たちに直接使える上級のメイドは、下手に結婚するよりも、働いていたほうがよい暮らしができるため、独身のまま務め上げて年金生活を送る人も多かったようです。

また、紳士階級との恋を成就させたメイドたちもいるにはいたのですが、社交界から拒絶されたり、結婚して子宝に恵まれても、その子が爵位を次ぐことができなかったりと、苦難の多い人生だったようです。


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エマ9巻では、メイドたちの買い物が描かれています。レースやリボンが欲しいけれど、仕送りもしないといけない、そんな買い物の様子が楽しそうで好きなんです。(*´∀`*)

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「エマ ヴィクトリアンガイド」→
「英国メイドマーガレットの回想」→

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レビューポータル「MONO-PORTAL」

2013.07.20 Saturday

英国版 家政婦は見た!「英国メイド マーガレットの回想」 マーガレット・パウエル

1920年代の英国、キッチンメイドからコックになった英国女性・マーガレット・パウエルのメイド時代の体験を綴った「英国メイド マーガレットの回想」を読みました。

当時の労働階級への差別と、つらい労働状況が描かれていて、古きよき英国に憧れる人にとっては、少し厳しい内容かもしれません。けれど、劣悪な環境の中でも、キャリアを積みながら努力を重ねていったマーガレットの姿は読み応えがありました。


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「エマ」と比較すると面白い


森薫さんの漫画「エマ」は、マーガレットの時代から約30年前、ヴィクトリア朝時代のお話で、美しく教養高いメイドエマと、紳士階級で資産家の長男ウィリアムとの恋物語なのですが、マーガレットの回想を読むと、エマがいかにファンタジックで実際にはありえないラブストーリーなのかがわかります。

「エマ」のストーリー→

昔から紳士階級とメイドの結婚はあったようですが、そんなのはおそらく稀で、マーガレットの時代でもメイドは階上(雇い主)たちから、対等の人として扱われることはなく、劣悪な労働、環境で働いています。

ただ、マーガレットの勤め先は「エマ」のように貴族や資産家の大邸宅ではなく、小規模な邸宅なので、労働環境などは違ってくるとおもいますが、メイドという職業は憧れるほどラクじゃないってことですね…。


紳士階級と労働階級


マーガレットの働いていた家の雇い主、上流階級(といっても、それほど金持ちでも位も高くない)の人々は、雇ったメイドを単に「労働力」としてしか考えていません。両者の間には埋められない格差への差別が存在します。

ある時女主人に新聞を手渡そうとしたら、「銀のトレーに置いて渡してちょうだい」と、まるで汚いものを見るように言われます。

けれどそんな辛い経験が、マーガレットを強く、したたかにしていきます。キッチンメイド(コックの下で働くメイド)の経験しかないのに、コックとして働いたり、まったく作ったことのない料理をつくって失敗したりしますが、それでも経験を積んで最終的にはフルコースまでつくれる料理人に成長していきます。


1920年代・英国労働階級の婚活事情


紳士的なイメージのあるイギリスですが、裏にまわると、上流階級のスキャンダルは日常茶飯事だし、メイドの中には主人や主人の親戚などと関係をもってしまい、捨てられて未婚の母になるといった悲劇も。

マーガレットは、そんな同僚の姿をみて、コックを目指ながらも「ちゃんとした結婚相手を見つけて退職してやる!」と心に決め、結婚相手を見つけるべく、出入りの商人やダンスホールなどで、相手を探します。

今も昔も、婚活女子は大変です(;´・ω・) 外出は雇い主の決めたルールに従わなければならないし、当時はまだメイドに対する偏見もあったようで、マーガレットは自分の職業を隠して男性とデートをしたりします。


日本語訳を担当した村上リコさんは、「エマ」の森薫さんと組んで、メイド関連の専門書を手がけてます。その他にもヴィクトリア時代の著作も多数。

「図説英国メイドの日常」→
「エマ ヴィクトリアンガイド」→

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2013.06.16 Sunday

辻占い師と江戸の人情ものがたり 「江戸名物からす堂」 山手 樹一郎

「遠山の金さん」や「桃太郎侍」など、有名な時代劇の原作を手がけた作家、山手樹一郎の「江戸名物からす堂」。

勧善懲悪なお話なのだけど、単純明快なだけではなく、江戸の人情や風俗がふんだんに盛り込まれていて、人々の暮らしや悩みなども丁寧に描かれています。

江戸名物からす堂 あらすじ


主人のために「千人の人助け」の誓いを立て、武士を捨てて人相見となったからす堂。そんなからす堂を心から惚れてやまない元芸者のお紺を中心に、お家騒動や人さらいなど、江戸の町で起こる事件をからす堂が解決していきます。

からす堂は、千人を救うまでは女性に手を出さないという誓いをたてているので、彼に惚れぬいているお紺さんは毎回やきもきしています。

登場人物も魅力的で、からす堂の人の運命を見通す能力と、冷静沈着な振る舞いもいいのですが、なんといってもヒロインお紺さんかわいいのです。2巻のはじめ、念願かなってようやく夫婦にななるのですが、その後のお紺さんはすっかりヤキモチがおさまり、まあ読んでいても当てられるほどののろけぶり。

時には亭主のことを信じて、自分の体を賭けてしまう無謀さや(お紺さんは色っぽいので、そういう賭けをよく申し込まれます)不吉な夢をみて、からす堂に甘えるところなど、本当に素直で可愛らしいんです。

また「江戸名物からす堂」には読んでいて、「なるほど!」と思う名言がでてきます。これは今でも私の金言として大切にしています。

「神様というのは敬うものであって、願掛けをしたりものをたのんだりするものじゃない。願掛けは自分の心にするものだ。」


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2013.05.29 Wednesday

日本人が、知っておくべき日本人 「無私の日本人」 磯田道史

「事実は小説よりも奇なり」ということわざがありますが、「無私の日本人」はそのことわざ通り、小説を超えた歴史に埋もれた人々の偉業を伝えてくれます。

「無私」とは自分をの欲や利害にとらわれないことをいい、この本に描かれたのはまさに、自分の欲を捨て出世を望まず、人のために尽くした3人の物語です。

これはすべての日本人に読んでほしい。(特に政治家の人たちに)

「無私の日本人」は、映画にもなった「武士の家計簿」の原作者で歴史学者の磯田道史先生が読み解いた古文書をもとに書かれた歴史小説です。

「小説」と書きましたが、「無私の日本人」は古文書からの「歴史の事実」という骨組みに、磯田先生が文章を肉付けしていった物語だと私は思います。だから物語の根幹であり主軸は、歴史に埋もれた人々が古文書に遺した「思い」だと感じるのです。

穀田屋十三郎


貧困にあえぐ伊達藩・吉岡宿を救うため、「藩に金を貸しつけて利子を民に分配する」という前代未聞の計画を遂行する十三郎ら9人の有志たち。財産の殆どを資金として放出し、やっと元金をつくったとおもいきや、せっかくの懇願を奉行所や勘定方は保留にしたり、さらなる資金を要求したりと、困難が襲います。

「前例がない」といって提案を突き返すお役所仕事は、もう江戸時代から始まっているんですね…。

江戸時代の庄屋という民間政統治システムや、「身分相応」といった、家の大きさによって相応の責任を求められるなど、江戸時代の庶民の社会のしくみについても解説されていて興味深い内容でした。

殿、利息でござる
「穀田屋十三郎」は、後に「殿、利息でござる!」として映画化。伊達藩の殿様役にはなんとフィギュアスケートの羽生選手が。

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中根東里


中国語を学び、詩人としても才能を発揮した中根東里は、荻生徂徠や室鳩巣に学ぶものの、出世をよろこばず、街中で草履をうりながら自らの真理を市井の人々に語る人生を送る。
その眼差しは常に世の中の弱き者にそそがれていました。


太田垣蓮月


藤堂家の庶子として産まれ美貌で知られる女性でしたが、不幸な結婚生活を体験したのちに出家。隠遁生活にはいっても、美貌によってくる男たちを撃退するため、自ら歯を抜いてみせるといった苛烈な一面を持つ女性。幕末の志士とも親交が深く、西郷隆盛の江戸攻めを諌める句を詠んだことで知られます。

蓮月尼は、「蓮月焼」という陶器を作って生計を立てていたのですが、偽者があらわれても、それでその人が食べていけるのならと、自作の和歌まで贋作につけてやっていたそうです。

それは蓮月尼が修行した境地「自他平等」に即した行いで、自分と他者との垣根を取り払うことこそが平穏への近道なのかもしれません。確かに後半生の蓮月尼は何事にもとらわれず、幸せそうでした。


無私の日本人
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磯田道史先生著作
「歴史の愉しみ方 - 忍者・合戦・幕末史に学ぶ (中公新書)」→
「江戸の備忘録」→
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「武士の家計簿」―「加賀藩御算用者」の幕末維新』→
「日本人の叡智」→
「無私の日本人」→


映画「武士の家計簿」感想→
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2013.03.31 Sunday

恋のうた、集めました。「うた恋い。和歌撰 恋いのうた。 」 渡部 泰明 杉田 圭

杉田圭さんの和歌マンガ「超訳百人一首 うた恋い。」をから和歌に興味をもち、和歌の本を読んでみようと思たのですが、古典の解説書は堅苦しいものが多くて読みづらかったのですが、そんな初心者の私にもぴったりの和歌の解説書が「うた恋い。和歌撰 恋いのうた。」です。

うた恋い。和歌撰 恋いのうた。」は、「うた恋い。」シリーズの監修を担当された渡部教授による和歌の解説と、杉田圭さんの描き下ろしマンガ3作がついていて、和歌の入門書としてはぴったりです。

詠み人たちは、もともとあった和歌を引用して即興的に恋のうたを詠んだり、情景をリアルタイムで伝える手段としても使っていました。当時の和歌は、歌であり、ラブレターであり、ソーシャルメディアやニュースの役割もあったのです。そのためには、各地の伝承や歴史、引用する和歌の知識など、豊富な知識が必要とされました。

うた恋い。和歌撰 恋いのうた。」では、飛鳥時代から鎌倉時代までの恋の和歌を選んで、その和歌の詠まれた歴史の背景やエピソード、和歌の恋愛テクニックなどを紹介されています。

杉田圭さんの漫画では「万葉集」の大海人皇子と額田王、「とわずかたり」の後深草院二条と有明の月(性助法親王)とのエピソードが描かれています。2つとも大好きなエピソードなので、漫画で読めてうれしい(*´∀`*)

古典というと堅苦しいイメージがつきまといますが、実は古代の人達って、現代人以上にイカれてます。有明の月なんて、二条につれなくされたら呪いの文を書いたりしてストーカーまがいのことしてますからね…。


うた恋い。和歌撰 恋いのうた。
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超訳百人一首 うた恋い。
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「超訳百人一首 うた恋い。【異聞】うた変。2」
「うた恋い。異聞 うた変。」
超訳百人一首 うた恋い。3
超訳百人一首 うた恋い。2
超訳百人一首 うた恋い。

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2013.03.29 Friday

江戸の姫さまは、結婚が仕事。 「大江戸の姫さま」 関口 すみ子

大河ドラマ「八重の桜」では、会津藩主・容保さまの義姉君、照姫さまが献身的に容保さまを支え、後の戊辰戦争では、城の女達を率いて怪我人の看護などを行なっていたそうです。そんな有事に大活躍をされた照姫さまですが、きっとそんな波瀾万丈な大名の姫さまは「まれ」なのでしょう。

でも、姫さまたちの一生って具体的にどんな感じなのでしょう?
そんな疑問を解明していくのが、関口すみ子さんの「大江戸の姫さま (角川選書)です。この本ではあまり知られていない姫様達の生活や婚礼、婚家での生活などを資料に基づいて紹介しています。

本の装丁からしてちょっと堅そうな本かな?と思ったのですが、文章がくだけていてわかりやすく、読みやすいので(歴史学者の本にしては珍しく)さらっと読めてしまいます。

姫さまの仕事、それは「大名の妻となること」。
家どうしの結びつきを深め、その家の様式を持ち込むことができるので、婚姻は非常に重要な役割もっていたのだそうです。だから、実子の姫がいない場合は、よそから姫を養子をとってまで婚姻を行うのだとか。
会津には保科、尾張には高須と、養子や跡づぎ要員となる親戚筋の支藩があり、照姫も保科家から会津に入って嫁いでいますね。

特に将軍家の姫さまの婚姻は政治的にも重要なものであったそうです。将軍の姫君が降嫁することによって、将軍家の権威や家風を大名家に示すことができ、内側から支配を強化する意味もあったそうです。おまけに姫君用の御殿もつくらないといけないので、当然大名家の経済的に圧迫させることもできたそうです。質素倹約の吉宗でさえ、養子筋の姫の婚姻にはお金をかけたのは、姫君の婚姻にはそれだけの「効果」があったのからなのでしょうね。


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2013.03.13 Wednesday

容保の兄・徳川慶勝の人生を描いた「冬の派閥」

大河ドラマ「八重の桜」で有名になった悲劇の名将・会津藩主松平容保。容保はもともと高須藩という尾張藩の支藩の出身で、幕末に活躍した他の兄弟を含め「高須四兄弟」と称されました。

容保の兄・徳川慶勝は、尾張藩を継ぐことになります。もともと高須藩は尾張藩に跡継ぎがいない時に藩主を出せる家柄なのですが、幕府の横槍で子沢山の徳川家斉の子どもたちを藩主に押し付けられる状態が長く続きました。
尾張系の血を引き、優秀な慶勝を藩主にするため、庶民が抗議の自殺まででる始末に、さすがの幕府も折れ、晴れて御三家筆頭・尾張藩藩主になったものの、ここからが慶勝の苦難の始まりでした。

冬の派閥 (新潮文庫)」では、慶勝がいとこである徳川慶喜の尻拭いをさせられる役回りだったようです。尾張藩の財政再建、派閥闘争の調整だけでも大変なのに、叔父(慶喜の父、水戸前藩主・徳川斉昭)にそそのかされたことで、安政の大獄では蟄居させられ、慶喜が将軍になる、ならないの駆け引きにも利用され、重い持病があるのに長州征伐を命じられ(その時の参謀が西郷隆盛)、最終的には信頼していた兄弟たちと敵味方で争うことに。

私の感想ですが、どうも慶喜という将軍は、一昔前の愚鈍なイメージから優秀な人物へと評価が変わってきましたが、慶喜の行動には、理はあっても、誠がないんですね。合理的に物事を進めるけれど、そこには情が足りない感じがします。(西洋風が好きでしたし、思考も西洋的なのかもしれません)

その「誠」を最後まで貫いたのが、慶勝や容保だったのだと思います。
それは、のちに悲劇を招くことになるのですが、日本人は、合理的な慶喜よりも、「誠」を貫いた容保や慶勝の方に親しみを覚えるのだと思います。

「冬の派閥」では、兄弟の信頼と互いを思いやる、心情あふれるシーンがでてきます。
容保は、孝明天皇から頂いた御真筆(天皇直筆)を「兄上にだけ」と慶勝にみせ、危うい立場に立たされた容保が陣をはる方角の空を、慶勝はいつも眺めている。やがてお互いの立場の違いから、兄弟は敵味方に争うことになります。

それでも維新後、慶勝は新政府軍に逆らった容保と定敬の弟の助命嘆願を画策したりと、最後まで兄弟への愛を持ち続けていたのでしょう。

歴史の表舞台に立つことなく、けれど、その功績がなければ歴史が変わっていた。
そんな無名の英雄たちの物語を読むのが好きです。

「冬の派閥」の後半は慶勝はあまりでてこず、尾張藩の北海道移民の話になります。個人的にはもう少し慶勝や高須四兄弟のその後について書いて欲しかったのですが…。

冬の派閥 (新潮文庫)
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八重の桜にも、慶勝さん登場して欲しいのですが、どうなんでしょうね…。

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徳川慶勝を関連特集
歴史秘話ヒストリア→

八重の桜関連
「八重の桜」と会津と白洲正子の、意外な関係
上毛かるたの偉人の多くは、実はあんまり群馬と関係ない。

JUGEMテーマ:時代小説


2013.02.13 Wednesday

「歴史の愉しみ方 - 忍者・合戦・幕末史に学ぶ (中公新書)」 磯田 道史

映画「武士の家計簿」の原作者、磯田道史先生が古文書から紐解いた真実の歴史を紹介する「歴史の愉しみ方 - 忍者・合戦・幕末史に学ぶ (中公新書)」は、歴史エッセイだけでなく、古文書から読み解いた地震の歴史や知恵も掲載されており、歴史ファンはもちろん、多くの人に読んで貰いたい1冊です。

学者は現実に、世の中の役にたたなければならない


磯田先生は「武士の家計簿」以降、記録に残りづらい忍者の古文書を発掘、研究をされてきましたが、東日本大震災以来、「学者は現実に世の中の役にたたなければならない。」と「歴史地震研究会」に入会、古文書に書かれた地震の記録を探しだし、歴史から学ぶ震災対策を研究されています。

本来であれば、そのまま忍者の研究に没頭してもいいのに、磯田先生はあえて歴史学者として、地震研究の道を選ばれました。本当に素晴らしいことだと思います。以前遭遇した、自説を主張してばかりで、役に立たない学者連中にも見習ってほしいものです。
この本でも第4章「震災の歴史に学ぶ」は地震活動期にはいった現代の日本人が、知っておくべき知識だと思います。

歴史の愉しみ方 - 忍者・合戦・幕末史に学ぶ (中公新書)
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真実の歴史は、時にドラマよりも面白い


「第1章 忍者の実像を知る」では、なかなか記録に残らない忍者の実態を探るべく、武士としての忍者の記録を探り、実際に忍者の里で子孫の方から資料を拝見して、歴史に隠れた忍者の歴史にせまります。赤穂浪士の討ち入りに関しても忍者が活躍したり、危険な任務の割に給料が少なかったり、意外な忍者の素顔がみえてきます。

「第2章 歴史と出会う」「第3章 先人に聞く」


武士の家計簿 ―「加賀藩御算用者」の幕末維新 (新潮新書)」のその後や、映画のエピソードが書かれています。武士の家計簿の主人公・猪山家の甲冑が偶然発見されたり、映画撮影現場での主演・堺雅人さんの役に対する真摯な姿に圧倒されサインをもらえなかった話など。

堺雅人さんは役に関する資料を集めて読み込むことで有名ですが、映画「武士の家計簿」については「原作ですべて語られているので、これ1冊しか読まない」とおっしゃってました。それだけ磯田先生の「武士の家計簿」は素晴らしい本ということです。

「第5章 戦国の声を聞く」


「直江状」で家康を激怒させた、直江兼続がなぜ殺されなかったか、その真相が古文書に記されていました。要は、関ヶ原の戦いで西軍につくよう主人にすすめた家老がほかにもたくさんいて、そいつらを全部粛清してたら大変なことになるので、その代表格である直江兼続を許すことでバランスを保ったということらしい。なるほどなあ。

その他、関ヶ原の古戦場を新幹線から眺める作法など、歴史マニアな内容も。


武士の家計簿 ―「加賀藩御算用者」の幕末維新 (新潮新書)
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磯田道史先生著作
「無私の日本人」→
「武士の家計簿」―「加賀藩御算用者」の幕末維新』→
「殿様の通信簿」→
「江戸の備忘録」→
「日本人の叡智」→

映画「武士の家計簿」感想→

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2013.02.07 Thursday

「八重の桜」と会津と白洲正子の、意外な関係

関東生まれ、東京在住、おまけに判官びいきの私なので、幕末・特に旧幕側のドラマ「八重の桜」は毎週欠かさず見ています。

ドラマ放送とともに八重の桜の主人公・新島八重の関連本も数多く出版され、その中の一冊「NHK大河ドラマ歴史ハンドブック 八重の桜 (NHKシリーズ)」を何気なく手にとってみたら興味深い箇所がありました。

その前に新島八重さんの生涯をざっくり解説すると

・会津の砲術師範の家系に生まれ、幼い頃から鉄砲に親しむ
・戊辰戦争では、男装して鉄砲をぶっ放し応戦
・その後は兄の山本覚馬を頼り京都へ
・そこで新島襄と知り合い結婚
・新島襄の死後、日清戦争・日露戦争で看護婦として活躍、民間女性で初めて勲章をもらう

とまあ、波瀾万丈の人生だったわけですが、会津を遠く離れても八重さんの会津への思いは強かったようです。
興味深かったのは晩年、君主であった松平容保侯の孫にあたる松平勢津子姫が、昭和天皇の弟君・秩父宮殿下とのご結婚が決まった時、よほど嬉しかったのか、祝賀式典のために上京したり、こんな歌も残してます。

「いくとせか みねにかかれる むら雲の はれて嬉しき 光りをぞ見る」


京都守護職を拝命し、朝廷と幕府を命がけで守ってきたのに「朝敵」とされてしまった会津藩。その会津の姫が皇族となられたのは、会津の方々の喜びようはひとしおだったことでしょう。まさに勢津子妃は苦労を重ねてきた会津の人々にとっての「光」であったのでしょうね。

ところで、この婚姻、実は意外な人物が関わっています。戦後日本でGHQと対等にわたりあった・白洲次郎の奥様にしてエッセイストの白洲正子さん。実は勢津子妃と親友で、正子さんの父親・樺山愛輔氏はこの婚姻を取り持ったのだとか。しかし、樺山家は会津と戦った薩摩藩士のお家柄。けれど正子さんの時代にはもう、そんな確執はなかったのかもしれません。

それにしても、伯爵令嬢なのに平気で「ブッコロス」とか「バカヤロウ」など言葉を吐く正子さんと勢津子妃、立場も家柄も(おそらく性格も)違うお二人が親友だったなんて、なんだか不思議ですね。

また、白洲次郎が東北電力会長だったとき、奥只見ダムの落成式(だったかな?うろ覚え)に勢津子妃をおよびしたところ、会津の方々の大歓迎ぶりがものすごかったと「白洲次郎 占領を背負った男」に書かれていました。


あれ?新島八重さんについて書こうとおもったら、白洲正子さんと勢津子妃のエピソードみたいになっちゃった。 まあ、結局、歴史って意外なところでつながっているんだな、ということが書きたかった、ということで。(^^;)

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