2013.02.13 Wednesday

「歴史の愉しみ方 - 忍者・合戦・幕末史に学ぶ (中公新書)」 磯田 道史

映画「武士の家計簿」の原作者、磯田道史先生が古文書から紐解いた真実の歴史を紹介する「歴史の愉しみ方 - 忍者・合戦・幕末史に学ぶ (中公新書)」は、歴史エッセイだけでなく、古文書から読み解いた地震の歴史や知恵も掲載されており、歴史ファンはもちろん、多くの人に読んで貰いたい1冊です。

学者は現実に、世の中の役にたたなければならない


磯田先生は「武士の家計簿」以降、記録に残りづらい忍者の古文書を発掘、研究をされてきましたが、東日本大震災以来、「学者は現実に世の中の役にたたなければならない。」と「歴史地震研究会」に入会、古文書に書かれた地震の記録を探しだし、歴史から学ぶ震災対策を研究されています。

本来であれば、そのまま忍者の研究に没頭してもいいのに、磯田先生はあえて歴史学者として、地震研究の道を選ばれました。本当に素晴らしいことだと思います。以前遭遇した、自説を主張してばかりで、役に立たない学者連中にも見習ってほしいものです。
この本でも第4章「震災の歴史に学ぶ」は地震活動期にはいった現代の日本人が、知っておくべき知識だと思います。

真実の歴史は、時にドラマよりも面白い


「第1章 忍者の実像を知る」では、なかなか記録に残らない忍者の実態を探るべく、武士としての忍者の記録を探り、実際に忍者の里で子孫の方から資料を拝見して、歴史に隠れた忍者の歴史にせまります。赤穂浪士の討ち入りに関しても忍者が活躍したり、危険な任務の割に給料が少なかったり、意外な忍者の素顔がみえてきます。

「第2章 歴史と出会う」「第3章 先人に聞く」


武士の家計簿 ―「加賀藩御算用者」の幕末維新 (新潮新書)」のその後や、映画のエピソードが書かれています。武士の家計簿の主人公・猪山家の甲冑が偶然発見されたり、映画撮影現場での主演・堺雅人さんの役に対する真摯な姿に圧倒されサインをもらえなかった話など。
堺雅人さんは役に関する資料を集めて読み込むことで有名ですが、映画「武士の家計簿」については「原作ですべて語られているので、これ1冊しか読まない」とおっしゃってました。それだけ磯田先生の「武士の家計簿」は素晴らしい本ということです。

「第5章 戦国の声を聞く」


「直江状」で家康を激怒させた、直江兼続がなぜ殺されなかったか、その真相が古文書に記されていました。要は、関ヶ原の戦いで西軍につくよう主人にすすめた家老がほかにもたくさんいて、そいつらを全部粛清してたら大変なことになるので、その代表格である直江兼続を許すことでバランスを保ったということらしい。なるほどなあ。
その他、関ヶ原の古戦場を新幹線から眺める作法など、歴史マニアな内容も。


歴史の愉しみ方 - 忍者・合戦・幕末史に学ぶ (中公新書)
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武士の家計簿 ―「加賀藩御算用者」の幕末維新 (新潮新書)
磯田 道史 新潮社 売り上げランキング: 6,255



磯田道史先生著作
「無私の日本人」→
「武士の家計簿」―「加賀藩御算用者」の幕末維新』→
「殿様の通信簿」→
「江戸の備忘録」→
「日本人の叡智」→

映画「武士の家計簿」感想→

JUGEMテーマ:歴史


2013.02.07 Thursday

「八重の桜」と会津と白洲正子の、意外な関係

関東生まれ、東京在住、おまけに判官びいきの私なので、幕末・特に旧幕側のドラマ「八重の桜」は毎週欠かさず見ています。

ドラマ放送とともに八重の桜の主人公・新島八重の関連本も数多く出版され、その中の一冊「NHK大河ドラマ歴史ハンドブック 八重の桜 (NHKシリーズ)」を何気なく手にとってみたら興味深い箇所がありました。

その前に新島八重さんの生涯をざっくり解説すると

・会津の砲術師範の家系に生まれ、幼い頃から鉄砲に親しむ
・戊辰戦争では、男装して鉄砲をぶっ放し応戦
・その後は兄の山本覚馬を頼り京都へ
・そこで新島襄と知り合い結婚
・新島襄の死後、日清戦争・日露戦争で看護婦として活躍、民間女性で初めて勲章をもらう

とまあ、波瀾万丈の人生だったわけですが、会津を遠く離れても八重さんの会津への思いは強かったようです。
興味深かったのは晩年、君主であった松平容保侯の孫にあたる松平勢津子姫が、昭和天皇の弟君・秩父宮殿下とのご結婚が決まった時、よほど嬉しかったのか、祝賀式典のために上京したり、こんな歌も残してます。

「いくとせか みねにかかれる むら雲の はれて嬉しき 光りをぞ見る」


京都守護職を拝命し、朝廷と幕府を命がけで守ってきたのに「朝敵」とされてしまった会津藩。その会津の姫が皇族となられたのは、会津の方々の喜びようはひとしおだったことでしょう。まさに勢津子妃は苦労を重ねてきた会津の人々にとっての「光」であったのでしょうね。

ところで、この婚姻、実は意外な人物が関わっています。戦後日本でGHQと対等にわたりあった・白洲次郎の奥様にしてエッセイストの白洲正子さん。実は勢津子妃と親友で、正子さんの父親・樺山愛輔氏はこの婚姻を取り持ったのだとか。しかし、樺山家は会津と戦った薩摩藩士のお家柄。けれど正子さんの時代にはもう、そんな確執はなかったのかもしれません。

それにしても、伯爵令嬢なのに平気で「ブッコロス」とか「バカヤロウ」など言葉を吐く正子さんと勢津子妃、立場も家柄も(おそらく性格も)違うお二人が親友だったなんて、なんだか不思議ですね。

また、白洲次郎が東北電力会長だったとき、奥只見ダムの落成式(だったかな?うろ覚え)に勢津子妃をおよびしたところ、会津の方々の大歓迎ぶりがものすごかったと「白洲次郎 占領を背負った男」に書かれていました。


あれ?新島八重さんについて書こうとおもったら、白洲正子さんと勢津子妃のエピソードみたいになっちゃった。 まあ、結局、歴史って意外なところでつながっているんだな、ということが書きたかった、ということで。(^^;)

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2012.10.07 Sunday

古代史を学ぶ。「天智と持統」 遠山 美都男

日本の古代史が好きです。特に飛鳥・奈良時代が。
特に好きなのが持統天皇。夫・天武天皇をささえ、天武亡き後は天皇として即位し活躍した女性です。
彼女の諱「鸕野讚良皇女(うののさららのひめみこ)」というのも、他の皇女たちにくらべて名前の音が美しいのも好きな理由のひとつです。(ツイッターのアカウントにも使わせていただいているくらい

古代の強い女性として描かれることの多い持統天皇ですが、その一方で、息子・草壁皇子を溺愛するがゆえライバル大津皇子を陥れる、目的のためなら手段を選ばない、強引な一面を持つ女性として伝えられています。
それが事実だとしても、私は好きですが(*´∀`*)

で、そんな持統天皇のことなんですが、よく考えたらこれらの漫画で得た知識だけだったので、古代史の勉強もかねて研究本を読んでみました。「天智と持統 (講談社現代新書)」は、持統天皇とその父・天智天皇について調査研究を行った本です。
文章もわかりやすく、さらっと読めました。ただ、他の研究書を引き合いに出して否定するのには閉口しましたが…(^^;)

天智と持統 (講談社現代新書)」では、天智天皇、鎌足、持統天皇の3人の周辺の歴史をさらい、伝説の「天智天皇像」を作り上げたのは持統天皇、ということらしいです。
強い天智天皇像をつくることでは自分の正当性を高めようとしたのではないかと…。

持統天皇に関しても、これまでの常識とは違った解釈がなされています。

通説では自分の息子よりも優秀な大津皇子が邪魔で陥れたことになっていますが、そもそも草壁皇子の方が皇位継承権が上位で(天智・天武の直径で、皇后である母が生存)それは覆られなかったため、陥れる必要がなかったのだとか。古代史は正確な記述が少なく、さまざまな解釈や持論が存在するので、どれが本当に正しいかがわかりづらい。
でも、だからこそ面白いんですよ。(*´∀`*)

ちなみに、鸕野讚良皇女の名前の由来は育てた乳母の氏族名。古代の皇子・皇女の名前は、育てた人たちの名前や地名がつけられるのだとか。なるほど〜、だから「大田」とか「阿部」といった名前があるのね。

天智と持統 (講談社現代新書)
遠山 美都男 講談社 売り上げランキング: 430004


今まで読んだ参考文献(漫画)。作家さんたちがきちんと時代考証を調べた上で描かれているので、これだけでも十分に勉強になります。

藤原不比等の活躍を描く長岡良子さんの「眉月の誓」。ここでの持統天皇は不比等の才能を見抜き、自分のブレーンとして抜擢し、改革を推し進めていきます。

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持統天皇の生涯を描いた里中満智子さんの代表作「天上の虹」。父・天智の強引な権力掌握で母を奪われた幼い鸕野讚良皇女は「男よりも偉くなってみせる」と誓い、成長していく一代記。

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JUGEMテーマ:歴史


2012.05.21 Monday

まんまことシリーズ「こいわすれ」 畠中 恵

神田の町名主の息子、麻之助と仲間たちが江戸の町で起こる人間模様を解決してゆく「まんまこと」シリーズ「こいわすれ」。
今まではお調子者と噂されてきた麻之助も、愛妻・お寿ずに子ができたと伝えられ、子に恥じない父になろうと、町名主の仕事に奮闘します。町名主とは、江戸時代、奉行所で裁ききれない民事事件を取り扱い、捌きを行う権限をもつ家柄。現在でいうと民間の簡易裁判所のようなものでしょうか。

河童騒動、文化人たちの意地の張り合いが興行対決に発展したり、鬼神のお告げで富くじがあたったりと、お江戸の庶民の問題は多種多様。不思議な話と思われても、実は問題の元になるのは人間のこころの持ちようであったりします。人の幸せをやっかんだり、相手に負けじと張り合ってみたり…。今も昔も変わりません。

麻之助はそんな人々の心の機微を、なかなかわかってきたらしく、難事件を次々に解決していきます。
しかし、そんな麻之助に突然の不幸が襲います。子も、妻のお寿ずも相次いでなくなってしまいます。
この時代のお産は命がけだったのですね。

ようやっと、初恋の人・お由有への思いを断ち切り、妻のお寿ずと幸せになれると思った矢先に。
これから麻之助はどうなってしまうんでしょう…。

こいわすれ
こいわすれ
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シリーズ感想
「まんまこと」
「こいしり」
「ときぐすり」
「まったなし」

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レビューポータル「MONO-PORTAL」

2012.04.17 Tuesday

十二国記のベース、古代中国の参考書「孟嘗君と戦国時代」 宮城谷昌光

十二国記も近々復活するということなので、小説の世界観のベースとなった春秋・戦国時代の歴史・風俗を復習。
宮城谷昌光先生の「孟嘗君と戦国時代 (中公新書)」を読みました。

戦国時代といっても日本のではなく、古代中国の戦国時代。東の大国・斉の名相・孟嘗君が活躍した戦国時代を、当時の歴史的背景やエピソードを含みつつ解説されています。古代中国の人物は、同じ人物でも、いくつかのあだ名や別名があり、時に本名さえわからない場合があるので、読み進めるのにいつも苦労するのですが、宮城谷先生の、噛み砕くようにやさしく、わかりやすい解説は、春秋戦国時代を学ぶのに最適の参考書です。

戦国時代力とは、力が弱まった盟主国(周)を中心に、諸国が覇権を争っていた時代です。その群雄割拠な様子は、日本の戦国時代にも共通します。

本の中には歴史や逸話のほか、孔子、墨子、孫子など、諸子百家などの思想家についても触れられています。どうも、こういった学者たちを国に招いて養うのが王や宰相のステイタスだったようですね。

さた、主役の孟嘗君という人は斉の宰相の息子で、幼い頃から聡明さを讃えられていましたが、母親の身分が低かったため、庶民の生活の実態に通じていたそうです。彼の食客(貴族が養う、才能のある人物たち)の内には、ならず者や盗賊もいたけれど、あるとき孟嘗君が秦から逃げる際に、関所・函谷関を越えるとき食客のひとりが鶏の鳴きマネをして朝を偽り、無事函谷関を通ることができた…。との逸話があります。

それが時代を経て平安時代の日本・清少納言の和歌にもつながっているのだから、歴史って面白いな。
夜をこめて 鳥のそら音は はかるとも よに逢坂の 関はゆるさじ


中国戦国時代の特徴まとめ
・英雄よりも名君が多い
・国の権力争いが高じて、公子(王子)や宰相が他国に亡命、そのまま他国で宰相になったり、自国と他国、両方の官吏なったりもする。


孟嘗君と戦国時代 (中公新書)
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「史記の風景」
「華栄の丘」
「沈黙の王」
「玉人」
JUGEMテーマ:歴史


2011.12.01 Thursday

韓流歴史ドラマの参考書 「知れば知るほど面白い 朝鮮王朝の歴史と人物」

人気の韓流歴史ドラマの参考書としても役立つ「知れば知るほど面白い 朝鮮王朝の歴史と人物」は、「宮廷女官チャングムの誓い」や、「イ・サン」など、多くの韓流歴史ドラマの舞台となった朝鮮王朝時代の歴史・人物・風俗についてわかりやすく解説されています。
朝鮮王朝では、王の言動が記録された公文書があり、ドラマはそこから大きく逸脱しない範囲で、大胆に脚色を行なっているそうです。日本の大河ドラマも歴史と違う演出があるので、そこは面白ければいいのでしょう。(実際に面白いしね。)

日本の大河ドラマとの違いにも触れられていました。日本は戦国時代や幕末を舞台に、主人公が出世していく様子を描きますが、韓流歴史ドラマでは、朝鮮王朝時代の宮廷で起こる権力闘争をメインに、主人公の成長が描かれていくのだそうです。確かに、韓流歴史ドラマでは宮廷のシーンが数多くでてきますね。

その他、女性たちを飾る大きな髪型はカチェといわれるかつらで、重さが数キロもあったり、華美になりすぎて禁止令がでたとか、リゾートとして名高い済州島は一番重い流刑地だったとか、興味深い朝鮮王朝の歴史を知ることができました。

面白かったのは、韓国では老舗店というのが存在しないという事実です。(今はあるのかな?)儒教社会で高学歴が日本以上に優遇されるため、代々続く「老舗」は「子供の教育に金をかけない貧しい店」と思われるのだそうですよ。確かに韓国の受験、大変そうだもんなあ(^^;)


JUGEMテーマ:韓流♪


2011.11.16 Wednesday

「吉原十二月」 松井 今朝子

ふたりの花魁の半生を描いた「吉原十二月
胡蝶と小夜衣、ふたりの異なる性格の花魁が妍を競い、蕾の禿(かむろ)時代から、華やかに大輪の花を咲かせるまでを、吉原の十二月の行事にからめて描いています。
いや、楽しかった。吉原の風景と花魁たちのの絢爛豪華な姿、そして最後は廓中を巻き込んだ大事件と華麗な結末。まるで歌舞伎や芝居をみているような臨場感がありました。

読み進めていくうち思ったのは「小夜衣は女からみるとイラッとするタイプ」ということです。
男から見ると、ミステリアスでおっとりしてて、何考えてるかわからないお嬢様タイプ。
実際、彼女は、幼い頃から思う相手がいるにもかかわらず、仕事以外で子供をはらんでみせたり(玄人の花魁にとって、妊娠は計画的な意図がないとほぼ不可能だから)、時に周りをあっと言わせる行動にでます。

一方の胡蝶は、花魁には珍しく気持ちが手に取るようにわかる、裏表のないタイプ。
ちょっと子どもっぽいところが玉にキズですが、気に入らない客は振る、花魁の信条である意地と張りを持っています。特に負けん気の強い胡蝶は、ことさら小夜衣と張り合うんだけれど、小夜衣の方はのらりくらりと嫉妬をかわし、時に天然だかわざとだか、わからないようなやりかたで胡蝶を炊きつけたりするし。

やっぱり女側からみると、どうしても胡蝶を応援してしまうのですよ。

けれどそんなライバル同士のふたりが、ただいがみ合っていたのかといえば、実はそうでもなく、一方が窮地におちいると、救いの手を差し伸べたり、心配しあったりする。共に苦界に育った女同士は、なんとも不思議な、強い絆で結ばれているようで、最後には男たちをあっといわせる事件を起こしてしまいます。いや、解決したのかな。

最後の引き際も2人らしくてかっこよかった。

吉原の花魁たちは、ただただ咲いているだけじゃない。そのプライドと才能をいかし、苦界を自らの足で歩んでいくのです。

吉原十二月
吉原十二月
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「円朝の女」→
「星と輝き花と咲き」→
「吉原手引草」→

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2011.10.28 Friday

「円朝の女」 松井 今朝子

幕末から明治に活躍した落語家・三遊亭円朝と彼にまつわる女たちを描いた「円朝の女
物語は、元弟子でその後五厘(寄席と芸人の交渉をする者)となり、長らく円朝のそばにいた男の口から、円朝が情を通じた女たちを語る形式で綴られていきます。

その語り口調が、やたら真実味をおびた感じで、まるで実際に円朝とその女たちのの色恋を伝え聞いているような心持ちになります。

円朝の女
円朝の女
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三遊亭円朝という人は落語家の中でも筆頭と言われる人で、彼の手による創作落語は、歌舞伎の演目にも取り入れられています。有名な所では「牡丹灯籠」や「人情噺文七元結」(これは近年勘三郎が上演)、「芝浜の財布」も円朝作だという説も。

円朝は当時の芸人には珍しく、品性に優れ、自分を律することの出来る人でしたが、やはり男と女の色恋の道は別らしく、数々の女性と浮名を流します。しかし、時に色恋の道は円朝の人生に時に影を落とすことにもなり…。

・幕末、贔屓の武家の娘との許されない純愛(「惜身の女」)
・お職の花魁や芸者衆との恋のさや当て(「玄人の女」)
・円朝と子までなした仲にも関わらず、その性格ゆえ遠ざけられ、落ちてゆく武家の娘(「すれちがう女」)
・円朝を支え、活躍の場を与えた元名妓の妻(「時をつくる女」)
・円朝の晩年を支えた「孝行娘」(「円朝の娘」)

一番好きなのは「玄人の女」です。円朝と女たちの恋の鞘当てが艶っぽくて粋な感じ。
しかし、読み進めていくうちにどんどん円朝の存在が薄くなっていく。最後の「円朝の娘」にいたっては円朝はほぼ出てこないし。それは、彼の淋しい晩年のを暗示するかのようです。

でも、最後に円朝の姿が薄くなるのはいいのだけれど、いままで色恋の艶や悲哀が描かれていたのに、いきなり戦争の悲惨さを話に練り込むのはどうなんだろうな〜。円朝が様々な女性と関わって、最後にどう亡くなったか、そのあたりをもっと描写してほしかった。

円朝の妻・お幸さんは、元は悲劇の名優・三代目沢村田之助の妻だったそう。どうやら彼女には「あげまん」の才があったようです。それにしても2度までも名人と呼ばれる人の女房になるのはどんな気分なんだろうね。




松井今朝子作品感想
「吉原十二月」→
「星と輝き花と咲き」→
「吉原手引草」→
JUGEMテーマ:歴史小説

JUGEMテーマ:読書感想文

レビューポータル「MONO-PORTAL」

2011.10.13 Thursday

「星と輝き花と咲き」  松井 今朝子

明治時代のアイドル、女義太夫・竹本綾之助の半生を描いた「星と輝き花と咲き

「子供の頃から容姿と才能に恵まれ、衝撃的なデビューを果たし、その人気の高さから若い男子学生の追っかけがつくようになる。しかし、人気絶頂で妊娠発覚、結婚を気に引退するものの、10年後に復活。」

こう書くと、なんだか現代のアイドルのようですが、実はこれ、明治時代の女性芸人・竹本綾之助の半生です。
浄瑠璃を語る女義太夫は当時人気の芸能人でした。中でも綾之助の人気は絶大で、彼女を目当てに劇場で騒いだり、人力車を追いかける学生たちは「ドウスル連」や「追掛連」と呼ばれていたそうです。
ドラマ「坂の上の雲」でも、書生時代の秋山真之が寄席で娘義太夫を贔屓にしているシーンがありました。

綾之助は、小さい頃から浄瑠璃で天賦の才能を発揮し、その才能を見込んだ世話人・近久によって女浄瑠璃の世界へ見を投じる。やがて綾之助の浄瑠璃は爆発的な人気を博し、若い書生たちからミューズのごとく崇められたり、強引なアプローチを受けるが、綾之助自身は浄瑠璃ひとすじ。しかし、ある時、贔屓の学生の友人・石井健太と出会い、恋に落ちてしまう…。

明治期の描写はすばらしく、臨場感があるし、明治時代のアイドルとも言うべき綾之助の人生は面白いのですが、ちょっと残念だったのは同じ松井今朝子さんの「吉原手引草」と比べると「艶」が足りない気がしました。
吉原の女郎と女芸人の世界を一概に比べられませんが、綾之助のは浄瑠璃の修行以外の面倒事は母親お勝と側近の近久が肩代わりしてくれたし、恋人ができてあっさり引退しようとするのも、世間知らずと言えなくもない。
綾之助もそうですが、恋人の石井も楽天的すぎて、読んでいてイライラしました。


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「吉原十二月」→
「吉原手引草」→
「円朝の女」→

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2011.09.04 Sunday

「史記の風景」 宮城谷 昌光

宮城谷昌光さんが描く史記解説本「史記の風景
史記とは、司馬遷が書いた古代中国の歴史書。宮城谷昌光さんのわかりやすい解説とやさしい文章で、難解なイメージのあった「史記」を面白く読み解くことができました。

「史記の風景」を読んでみると古代中国の文化や慣習が、意外にも現代の私たちが使う言葉や習慣の中に残っていたりします。また戦国武将や江戸時代の俳人なども、史記を読んでいて、史記から引用している手紙や作品も残っているそうで、数千年前の歴史からの影響が、現代まで脈々と続いているというのは興味深かったです。


・竜のイメージ
古代は空をとぶ鳥を神聖視しており、王のシンボルも殷や周の時代は鳳凰だった。周朝が五行でいうところの「火」であるため、秦の始皇帝は「火」に勝る「水」のシンボル竜を国(皇帝)のシンボルに採用したらしい。
春秋戦国時代の風習を世界観に取り入れた「十二国記」でも、王のことを鳳凰にたとえた記述がありました。(「図南の翼」)

・喪服が黒いわけ
現代に置いては喪服は黒と決まっていますが、喪服がが黒くなったのは春秋時代、喪に服していた晋国に秦の王が不埒な振る舞いをしたため、晋の王は白い喪服を黒く染めて秦と戦ったのが始まりなのだとか。白い服は敗戦の時に着る→でも喪服なので脱げない→だったら喪服自体を黒しちゃえ!…ということらしい。

・劉備玄徳の祖先
三国志で有名な劉備玄徳は漢王朝の王族・中山靖王の末孫を名乗っていました。
その中山靖王とはいかなる人物かというと、清廉潔白な劉備の印象とは程遠い、酒食に溺れて政務を顧みない人だったのだとか。

・現代と違う意味の漢字
古代中国では現代とは意味が違う言葉も多々あるそうで。

・「旅」は軍隊を、「館」は軍の霊を祀るところ意味。
・「小説家」は、学説を説く学者「大説家」に対し、世間の話や情報を道で伝え説くもののこと意味する。
まあ、「小説家」は当たらずしも遠からずかなあ。どっちかといえばジャーナリストに近いのかも。

史記の風景 (新潮文庫)
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古代中国の冒険譚「沈黙の王」→
古代中国の恋愛模様「玉人」→
古代中国の名宰相「華栄の丘」→
誕生!中国文明展→

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