「あしながおじさん」 ジーン・ウェブスター

2009.12.07 Monday

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    学校の教科書で初めて読んで以来、ずっと読み返している大好きな小説「あしながおじさん
    物語が主人公・ジュディの書いた手紙だけでつづられていくのも新鮮だったし、ジュディが経験するアメリカの大学生活が本当に楽しそうでした。
    孤児院育ちのジュディが体験する大学生活は何もかもが新鮮な驚きに満ちています。寮の部屋の模様替え、友達とのおしゃべり、プディングやワッフルなどおいしそうなお菓子、農場で過ごす夏休みなど、ジュディの過ごす生活は読んでいるこちらも楽しく、何度読んでもワクワクします。

    また、年をとってから読み直してみると、恋愛小説としても楽しめるんですね。ジュディは友人・ジュリアのおじであるジャービスさんに魅かれていくのですが、みなさん御承知のとおり、あしながおじさん=ジャービスさんなのでジュディの考えていることがすべてジャービスさんに筒抜けってのはフェアじゃないんじゃないの?と若いころは思ったものですが、ジャービスさんからしたら余裕がなかったんでしょうね。
    ジュディに恋をしてからは、ジュディが滞在中に農場を訪れたり、嫉妬からサリーの別荘へ行こうとするのを止めようとしたり、(サリー兄のことをライバル視していた)紳士にあるまじきこどもっぽい行動をしたりします。

    また、ジャービスさんに世間知らずと思われがちなジュデイですが持前の聡明さと観察力で「男の人は毛並みに沿ってなでてあげればよい」などというたとえを使ったりして、年上のジャービスさんよりずっと大人なのです。
    少年のまま大人になった紳士と、大人の女性の才覚を持ち合わせた少女ジュディとの恋物語は何度読んでも面白い。80年も前の本なのに、このなかには恋愛小説の要素がほとんどつまっている気がします。

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    ミュージカルとしてはすばらしいけれど、ストーリーは変えられているので、原作とは別物と考えるべき。
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    Daddy Long Legs (クイーンズコミックス)
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    ・男性目線のあしながおじさん。舞台を昭和初期の日本に置き換えたかわいい漫画「Daddy Long Legs」→
    ・「あしながおじさん」の続編、「続あしながおじさん」ジュディの親友、サリーがジュディの育った孤児院の院長になるお話です。→
    ・ジーン・ウェブスター初期作品「おちゃめなパッティ」→
    ・図書館戦争作者、有川浩先生も「活字で胸キュン」したと言ってました。→

    女子の夢がつまったファンタジー!『植物図鑑』 有川 浩

    2009.11.03 Tuesday

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      携帯小説サイトsari-sariで連載されていた有川浩さんの「植物図鑑」。ある日、行き倒れていたイツキを偶然「拾った」さやかは、彼に魅かれて家事全般を依頼するのを条件に共同生活を始める。

      植物図鑑 あらすじ


      さやかはイツキに恋心を抱くものの、気持ちを伝えたらイツキが出て行ってしまうではないかと思い、ただの同居人のまま共同生活が続いていく。野草に詳しいイツキの影響で「狩り」と称した野草摘みでゲットした食材を使った料理をつくり、次第に野草の魅力にはまっていく。

      あるとき、会社の同僚がさやかにアプローチしてきたせいで、お互いの気持ちにブレーキが外れて、同居人から恋人同士に。愛し合って時々野草を摘んで食卓を囲む。
      そんな幸せな生活がいつまでも続くと思っていたのに、ある日突然、イツキが姿を消してしまい…


      これはもう恋愛小説じゃねえ!恋愛ファンタジーだ!


      好みのタイプでしつけのいきとどいた男子が、家事全般をやってくれる共同生活。
      これはもう恋愛小説じゃねえ!恋愛ファンタジーだ!女子の夢だ!そしてまた、展開が甘いのよ。あの名作「別冊 図書館戦争〈1〉」より甘いんじゃないだろうか。作中にでてくる野草摘みも楽しそうで、これを読むと実際に野草を摘みに行きたくなります。


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      ・携帯版と本の違いについて


      芙蓉千里」もそうだったのだけど、携帯版と本って印象が全然違うんですね。携帯版のときは「いつまでも草摘みにいってないでさっさとくっつけ!(ノ>д<)ノ゙」と、思ってやきもきしたり、ちょっと長すぎると感じていた野草摘みのシーンも、本で読んでみると各章ごとのさやかとイツキの関係の変化がわかりやすくて携帯版よりも楽しめました。やはり本の威力はすごい。


      書き下ろし部分の「ゴゴサンジ」「午後三時」は、ちょうど午後三時くらいに咲くハゼラン、通称「ゴゴサンジ」をめぐり、イツキが去った後のさやかとイツキのその後について書かれています。
      その後ふたりとも、つらい時期を乗り越えられたんですが、さやかの後遺症がちょっと心配。不安になってメールやら電話を連発する気持ち、わかるなあ。

      ちょっと残念だったのは、さやかに横恋慕する営業のにーちゃんがベタすぎたこと。いまどき女子の弁当を「もーらい♪」と指でつまんで食べる奴いるのか?そんなやつが営業No1になれるとは思えないんだけど…
      いけばな展のエピソードも予想できてしまったのもちょい残念。


      「植物図鑑」で重要な役割をになう花・ヘクソカズラ↓確かに花は可憐なのだけど…

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      有川作品感想
      旅猫リポート
      ほっと文庫 「ゆず、香る」

      クジラの彼
      ラブコメ今昔
      阪急電車
      海の底
      空の中
      レインツリーの国
      三匹のおっさんふたたび
      三匹のおっさん

      キケン
      ヒア・カムズ・ザ・サン
      シアター!
      シアター2!

      フリーター、家を買う。
      県庁おもてなし課

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      「武士道セブンティーン」 誉田 哲也

      2009.09.24 Thursday

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        武道としての剣道を目指す青春武士道ストーリー。
        武士道シックスティーン」の続編「武士道セブンティーン

        正直、前回読んだ「武士道シックスティーン」では香織のかたくななまでのジャックナイフっぷりについていけない部分もあったのですが、今回はすごく面白かった!「武士道シリーズ」の中で一番好きです。
        早苗ののほほんとした強引さと、東松女子剣道部のみんなに支えられて香織はスランプから立ち直り徐々に心を開いていきます。ようやくこれから…というときに、早苗は復縁した父親の都合で福岡へ。

        福岡では早苗は名門、福岡南の剣道部に入部するものの、勝つために手段を選ばない指導と、仲良くなった剣道部員、黒岩レナのスポーツとしての剣道の考え方に疑問を抱く。
        早苗はインターハイで次鋒に選ばれるものの、それは中学大会準優勝の香織に勝ったという経験を買われてのことだった。
        香織と目指そうとした「武士道」とかけはなれ、どんどん剣道が嫌いになってしまう早苗。

        今回は早苗ちゃんがいろいろと悩んでます。
        一方、東松に残った香織は後輩の面倒をみたり、チームで勝つために考えたりとずいぶん成長していきます。中学時代のヘタレ男子、清水が不良にからまれたところを助けてなつかれちゃったり。1年の時とは別人のようだ…。・゚・(*ノД‘*)・゚・。

        今回は、武道とスポーツというのは違うものなのだということを実感というか、体感させられました。香織も早苗も、自らの信じた剣道を貫くために、ある行動にでるんですが。それがまた痛快で。

        柔道も剣道も武道というのはもともと優劣を競うものではないんですね。剣道の知識はまったくない私ですが、柔道のように防具や竹刀に色がついたり、やたら競技化してしまうのはやっぱり見たくないです。

        「武士道シックスティーン」→

        「武士道エイティーン」→

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        武士道エイティーンも発売。こちらもたのしみ。
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        剣道大会の決勝の映像があったので載せてみました。ものすごく早いですね。

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        「くうねるところすむところ」 平 安寿子

        2009.09.22 Tuesday

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          転職雑誌の副編集長である梨央は、やりがいのない仕事と出口の見えない不倫(編集長と)に嫌気がさし、酒に酔った勢いで開いていた工事現場の足場をのぼってしまう。
          降りられなくなってしまった梨央を助けてくれたのは、とび職の田所だった。田所に恋をし、最初は彼に近づくために仕事のことを聞きだす梨央だったが、しだいに田所の語る建築現場の魅力に魅かれ、建設の世界に飛び込んでいく。

          もう一人の主人公・姫(社長の娘だから)こと郷子は、離婚をきっかけに、父親の会社「鍵山工務店」を継ぐことになってしまう。
          最初は会社をたたんでしまう腹積もりだったが、古参の社員たちに「信用があるからすぐにはやめられない」と諭され、素人社長として資金繰りや謝罪に駆け回る日々。
          銀行からの助言(脅し)でリストラを敢行するものの、やめた社員ができる社員を引き抜いたため、現場が回らなくなってしまう。
          そこで姫社長は、建築の世界に飛び込んだばかりの新入社員・梨央を現場監督に任命する。

          男尊女卑の気風が残る建設業界で、2人の女性が活躍するところが痛快でした。2人とも最初の動機は不純(梨央は恋、姫はいやいや)でしたが、悪戦苦闘しながら建築の世界の魅力にはまっていきます。姫は最後の方までうだうだしていましたが、それでも気づくところはあったようで、合併や廃業の誘いを乗り越えて建築の世界で真面目にやっていく決意をします。

          それにしても施主というのは突拍子もないわがままを言い出すものだというのを初めて知りました。依頼主というのはどの業界でもやっかいですが、「自分の家」を建てるというのは格別で、人生を担っている一大行事だからこそあれこれと口を出したくなるのでしょうね。
          それに応えてくれる建設業界の人たちってすごい。
          物語に出てくる職人さんたちは建物をいきもののようにやさしく、丁寧にあつかうんです。
          そして建てた家は自分の家のように愛着があるのだと。

          手抜き工事をする業者はきっと建物を愛していないのでしょうね。


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          「芙蓉千里」 須賀 しのぶ

          2009.09.13 Sunday

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            有川浩作品「植物図鑑」と共に携帯小説サイトに連載されていた「芙蓉千里」。

            芙蓉千里 あらすじ


            明治末期、一人の少女・フミが中国大陸に渡った。彼女は角兵衛獅子で鍛えた身のこなしと舞の才能で、やがて哈爾浜(ハルピン)で名をとどろかす芸妓へと成長する。

            自分を捨てた父親から母親は吉原の花魁だったと聞かされ、自らを女衒に売り込み、大陸一の女郎となるべく海を渡るフミ。親に売られたタエとともに哈爾浜の女郎屋・酔芙蓉で下働きを始める。酔芙蓉では元武家でお職の蘭花、妖艶な牡丹など華やかな女郎たちがあでやかさを競っていた。

            ある日フミはスリから助けてくれた日本人の男・山村に出会い、特別な感情を抱くが、謎の多い山村は素性を明かそうとしない。そんな中、ハルビンを訪問した伊藤博文が暗殺されるという事件が起こる。見物客として一部始終を見ていたフミの視界には、あの山村がいた…

            数年後、芸妓「芙蓉」を名乗り、彼女の舞に魅せられた貴族の次男、黒谷貴史からも援助をうけ、ハルピン一の舞姫に成長するフミ。しかし黒谷は普通の旦那ではなく、過去の心の傷からか、フミには色恋というよりも彼女の舞を愛している人物。そんな時、再びフミの前にあらわれた山村。彼についてゆくか、ハルビンで芸妓「芙蓉」であり続けるか、フミの選択は…

            大陸に渡った少女たち


            「芙蓉千里」では、当時の大陸で海を渡った女郎たちがどんな思いで、どんな生活をしていたのかが詳細に描かれています。明治期にアメリカ活躍した娼婦「風船お玉」さんはわりあい自由に行動していましたが、大陸の女郎たちは店と借金に縛られるのは内地と変わりはしないんですよ。

            大志を抱いた大陸浪人の男どもと違い、女はどこへいっても苦労がつきまといます。それだけに、酔芙蓉の華やかさには目を奪われます。芸妓「芙蓉」となったフミの舞にも。

            全体的に面白いお話なんですが、残念なのは携帯版とずいぶん違ったこと。登場人物の名前も変わってしまったし、好きなエピソードも削られてしまっていた。確かに長い連載だったので削ったことで話の筋はわかりやすくなったけれど。それと、歴史ものだとどうしても波乱の展開を期待してしまうんですよね。

            物語の最初で伊藤博文の暗殺がでてきたので、その後もフミと山村が歴史的事件に絡んでいくのじゃないかと思っていたんですが。。

            芙蓉千里
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            「くれないの紐」
            痛快な明治女性の生きざまを描いた「義侠娼婦 風船お玉」→

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            「ジョゼと虎と魚たち」 田辺 聖子

            2009.09.07 Monday

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              田辺聖子さんの描く女性たちはみな、自立している。
              精神的にも、生き方にも。
              中には悩んだり問題を抱えている人もいるのだけれど
              生き方にぶれがくて潔い。

              タイトルにもなった「ジョゼと虎と魚たち」は犬堂一心監督で映画化もされています。足の不自由なクミと、彼女に魅かれる恒夫。
              クミが自分のことをジョゼと呼ばせたり、自分のことを「アタイ」といったり、恒夫に対して高飛車な態度にでたりする。
              その様がなんともかわいらしいのです。

              ジョゼは恒夫と、動物園に虎を見に行きます。
              好きな人ができたら一番怖いものが見たい。
              怖うてもすがれるから。
              もしできへんかったら一生、ほんものの虎は見られへん。

              今の幸福を続くものとは思わず、完全無欠な幸福は死と同じだと考えるジョゼ。このつらくても潔い生き方に、読むたびパワーをもらってます。

              ジョゼと虎と魚たち (角川文庫)
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              「薔薇の雨」→
              「孤独な夜のココア」→
              「おちくぼ姫」→
              「ほどらいの恋」→
              「芋たこなんきん」→

              「蝶々喃々(ちょうちょうなんなん)」 小川 糸

              2009.09.03 Thursday

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                蝶々喃々とは「男女がうちとけて小声で楽しそうに語りあうさま」という意味だそうです。「食堂かたつむり」を読んだとき、主人公や設定に共感できる部分が少なかったけれど、このまま読まなくなるのも「惜しい」と思い、2作目も読んでみました。

                東京下町の風情を残す谷中でアンティーク着物店を営む栞(しおり)の恋物語と下町の粋な人々との交流が四季を通じて描かれています。谷中は根津や千駄木とともに「谷根千」と呼ばれ、下町情緒が味わえる身近な観光スポットです。京都や鎌倉ほど敷居が高くなく、身近だけれど非日常的な谷中は物語の舞台としてはすごくいい。

                お茶を習うために着物を買いにきた春一郎という男性と恋に落ちる栞さん。お蕎麦や鳥鍋。下町情緒あふれる空間でおいしいご飯を好きな人と一緒に味わう。季節のお祭り、お月見にお茶会。
                いとしい人と一緒にいる時間はことのほか贅沢に感じられます。

                ただ、春一郎さんに妻子がいるっていうのが、もひとつこの物語にのめり込めなかった要因かもしれません。相手に妻子がいる設定だからこそ成り立つ物語なのかもしれませんし、そこが作者のこだわりなのかもしれないのですが。
                奥さん側からしたら栞さんのような女性はものすごくずるい存在に映るんじゃないかな。だって、着物を着ていて、料理が上手で、谷中や湯島で風流なデート。ずるいですよ。
                実際に生活していたら、こんな風流には生きられないよ。

                それと栞さんの心情がよくわからなかった。死んでしまった元恋人の墓前に春一郎さんを連れて行って「好きな人ができました」と報告するのなら、なぜそのあと不倫関係に悩むのだろう。私は栞さんはずっと、春一郎さんに妻子がいてもそれを超越した関係を望み、続けるのかと思っていた。
                だったら最初からそんな関係にならなければいいのになあ。

                だから栞さんの生活自体はうらやましいとは思うけれど、今回も共感はできなかった。下町の風景や、主人公を支える下町育ちの老人たちや家族の描写は前回より格段によかったのだけど。

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                「sweet aunt」 さとう さくら

                2009.08.05 Wednesday

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                  20代女子のリアルな恋と生活を描いた「スイッチ」「メルヘンクラブ」の作者・さとうさくらさんの「sweet aunt
                  他の作品と同じく今どきの女子のリアルな日常ですが、今回は「家族」の物語が加わりました。でも、そこはさとうさくらさんらしく、家族との関係もベタベタせず、一定の距離感を保っています。

                  事故で両親を亡くした実花。実は自慢だったパパとママは、貯金も年金もないフリーターだったため、路頭に迷いそうな実花は嫌っていたおばさんと一緒に住むことになる。美人なママに似ず、地味な風貌のおばさんを苦手に思っていたけれど、一緒に暮らすうちにおばさんが以前より身近な存在になっていく。

                  おばさんと実花の距離感が好きです。べたべたしすぎず、恩着せがましくなくて。日本の家族システムだと、親戚の家に引き取られるというと遠慮や恩を感じなければならないようなイメージがありますが、それがこの2人にはない。実花も結構おばさんに言いたいことをいうし、おばさんも必要以上に甘やかさない。でも、ちゃんとつながっている。
                  おばさんはいつも、私を見ないのに、見ていた。
                  この文章が二人の関係をすごく表している気がします。

                  その他、さとう作品によく登場する
                  チャラくてヘタレな男子、無気力でいい加減な30男、
                  主人公と性格も生き方も対照的な親友といったキャラクターたちもリアルで実際に街にいそうな感じです。

                  sweet aunt
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                  「スイッチ」→
                  「メルヘンクラブ」→
                  「携帯を盗み読む女」→

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                  「スイッチ」 さとう さくら

                  2009.07.03 Friday

                  0
                    メルヘンクラブ」を読んでから、さとうさくらさんのファンになりました。「スイッチ」は日本ラブストーリー大賞の審査委員絶賛賞を受賞した作品。現代の若い女子のリアルを描いたこの作品は賛否両論があったそうですが、好きな人はものすごくひきつけられる作品だと思います。
                    審査委員絶賛賞」などという賞を付与される事態、この作品の独特な魅力を表してますよね。(^^)

                    わたし「スイッチ」に魅かれた一人です。
                    仕事も人間関係もうまくいかず、孤独でうだうだとすごしている主人公・苫子は、まるで自分の20代を見ているようでした。

                    主人公・苫子は人とのコミュニケーションが苦手。そのせいで頭はいいのに就職できず、アルバイトもすぐクビになり、うだうだした生活を続けている。苫子は嫌なことがあると首の後ろにスイッチを探し、それを押すことで他人や自分の存在を消してしまいたかった。あるビルの清掃員のバイトについた苫子はそこで短大時代の友人、結衣に再会する。苫子はりっぱな社会人として働く結衣に引け目を感じるが、人間関係の経験の薄い苫子には、関係の断り方も分からず、結衣のいうままに友達関係を続ける。そんな自分にイライラして首の「スイッチ」を探しながら…

                    清掃員のパートの中島さんや元キャバ嬢の瑠夏、それと苫子のことを「面白い」と、普通に接してくれる家具マニアのサル男、苫子の仕事ぶりをほめてくれた社長。
                    そうした人たちと関わることでいいかげんだった苫子の人間関係にもちょっとずつ動きが生じて、ちょっと成長していきます。

                    苫子は、社会に受け入れてもらえない、でもどうしたらいいか分からなくてそんな自分が嫌なんだけど、実は結衣もあまり人間関係が得手ではなく、だから計算やフォローで努力している。そんな結衣に苫子は、自分の気持に素直に生きているように見えるらしい。
                    だから自分の(女たらしの)彼が苫子にちょっかいを出した時だけ本音を出してきた。


                    私は「コミュニケーションが得意ですぅ」って人、あまり好きじゃないんです。誰でも「どうしてこうなっちゃうんだろう」とか悩むことあると思うし、悩まない人間て、実は相手のことを見ていないような気がするし。
                    ま、苫子のように極端すぎるのもなんですが(^^;)
                    でも、「どうしょうもない自分」を隠さずにやっていこうとする苫子は実は強い人なんじゃないかと思います。
                    だからそれがわかる人とは関係が続いていくんじゃないかな。


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                    「ほどらいの恋―お聖さんの短篇」 田辺 聖子

                    2009.06.21 Sunday

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                      NHKドラマ「芋たこなんきん」を見てから気になっていた田辺聖子さん。

                      あのほんわかとした雰囲気の方が、いったいどんな恋愛物語を描くのだろうと思っていたら、読んでいっぺんで、やられてしまった。

                      かわいくて、やさしくて、ほっこりする。すてきな大人の恋物語を描くんだろう。と。


                      ほどらいの恋―お聖さんの短篇 (角川文庫)
                      田辺 聖子
                      角川書店
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                      大阪弁のかわいげ


                      田辺さんの文章にはふんだんに大坂弁が使われているのですが、これが実にやわらかくて、どこか艶っぽい。今までかしましいイメージしかなかった大阪弁が、まったく違った言葉に聞こえてきます。

                      タイトルにある「ほどらい」とは、大阪弁「ちょうどいい」という意味。形にはまららない、ちょうどよい男女の恋愛は、読んでいてほっこした気持になります。

                      私が好きな話は「ほどらいの恋」と「鬼が餅つく」。「ほどらいの恋」は精神的にも経済的にも自立した大人の恋愛を描いていて、その「ほどらい」距離感が読んでいて心地いい。

                      「鬼が餅つく」は壮年の男女の友情とも愛情ともつかない間柄。
                      彼女と、とりとめもなく、はかないよしなしごとを語り合いたいのである。


                      人生の機微をわかった年代だからこそ、「はかないよしなしごと」のおしゃべりは恋愛よりも貴重でかけがえのないものなのかもしれません。


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