2011.10.13 Thursday

「星と輝き花と咲き」  松井 今朝子

明治時代のアイドル、女義太夫・竹本綾之助の半生を描いた「星と輝き花と咲き

「子供の頃から容姿と才能に恵まれ、衝撃的なデビューを果たし、その人気の高さから若い男子学生の追っかけがつくようになる。しかし、人気絶頂で妊娠発覚、結婚を気に引退するものの、10年後に復活。」

こう書くと、なんだか現代のアイドルのようですが、実はこれ、明治時代の女性芸人・竹本綾之助の半生です。
浄瑠璃を語る女義太夫は当時人気の芸能人でした。中でも綾之助の人気は絶大で、彼女を目当てに劇場で騒いだり、人力車を追いかける学生たちは「ドウスル連」や「追掛連」と呼ばれていたそうです。
ドラマ「坂の上の雲」でも、書生時代の秋山真之が寄席で娘義太夫を贔屓にしているシーンがありました。

綾之助は、小さい頃から浄瑠璃で天賦の才能を発揮し、その才能を見込んだ世話人・近久によって女浄瑠璃の世界へ見を投じる。やがて綾之助の浄瑠璃は爆発的な人気を博し、若い書生たちからミューズのごとく崇められたり、強引なアプローチを受けるが、綾之助自身は浄瑠璃ひとすじ。しかし、ある時、贔屓の学生の友人・石井健太と出会い、恋に落ちてしまう…。

明治期の描写はすばらしく、臨場感があるし、明治時代のアイドルとも言うべき綾之助の人生は面白いのですが、ちょっと残念だったのは同じ松井今朝子さんの「吉原手引草」と比べると「艶」が足りない気がしました。
吉原の女郎と女芸人の世界を一概に比べられませんが、綾之助のは浄瑠璃の修行以外の面倒事は母親お勝と側近の近久が肩代わりしてくれたし、恋人ができてあっさり引退しようとするのも、世間知らずと言えなくもない。
綾之助もそうですが、恋人の石井も楽天的すぎて、読んでいてイライラしました。


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「吉原十二月」→
「吉原手引草」→
「円朝の女」→

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2011.09.04 Sunday

「史記の風景」 宮城谷 昌光

宮城谷昌光さんが描く史記解説本「史記の風景
史記とは、司馬遷が書いた古代中国の歴史書。宮城谷昌光さんのわかりやすい解説とやさしい文章で、難解なイメージのあった「史記」を面白く読み解くことができました。

「史記の風景」を読んでみると古代中国の文化や慣習が、意外にも現代の私たちが使う言葉や習慣の中に残っていたりします。また戦国武将や江戸時代の俳人なども、史記を読んでいて、史記から引用している手紙や作品も残っているそうで、数千年前の歴史からの影響が、現代まで脈々と続いているというのは興味深かったです。


・竜のイメージ
古代は空をとぶ鳥を神聖視しており、王のシンボルも殷や周の時代は鳳凰だった。周朝が五行でいうところの「火」であるため、秦の始皇帝は「火」に勝る「水」のシンボル竜を国(皇帝)のシンボルに採用したらしい。
春秋戦国時代の風習を世界観に取り入れた「十二国記」でも、王のことを鳳凰にたとえた記述がありました。(「図南の翼」)

・喪服が黒いわけ
現代に置いては喪服は黒と決まっていますが、喪服がが黒くなったのは春秋時代、喪に服していた晋国に秦の王が不埒な振る舞いをしたため、晋の王は白い喪服を黒く染めて秦と戦ったのが始まりなのだとか。白い服は敗戦の時に着る→でも喪服なので脱げない→だったら喪服自体を黒しちゃえ!…ということらしい。

・劉備玄徳の祖先
三国志で有名な劉備玄徳は漢王朝の王族・中山靖王の末孫を名乗っていました。
その中山靖王とはいかなる人物かというと、清廉潔白な劉備の印象とは程遠い、酒食に溺れて政務を顧みない人だったのだとか。

・現代と違う意味の漢字
古代中国では現代とは意味が違う言葉も多々あるそうで。

・「旅」は軍隊を、「館」は軍の霊を祀るところ意味。
・「小説家」は、学説を説く学者「大説家」に対し、世間の話や情報を道で伝え説くもののこと意味する。
まあ、「小説家」は当たらずしも遠からずかなあ。どっちかといえばジャーナリストに近いのかも。

史記の風景 (新潮文庫)
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古代中国の冒険譚「沈黙の王」→
古代中国の恋愛模様「玉人」→
古代中国の名宰相「華栄の丘」→
誕生!中国文明展→

JUGEMテーマ:歴史小説


2011.08.16 Tuesday

「日輪の遺産」 浅田次郎

堺雅人さん主演で映画化された「日輪の遺産」、浅田次郎さんの原作を読んでみました。

太平洋戦争終結直後、山下将軍がフィリピンでマッカーサーから奪った金塊を隠すため、将校、大蔵省出向の役人、叩き上げの軍曹の3人と、勤労奉仕に動員された女学校の生徒たちが作戦に関わることに。
それから47年後、ワンマン経営の不動産業者・丹羽は、競馬場で不思議な老人・真柴と出逢い、なりゆきで酒につきあうが、その日のうちに老人は急死してしまう。やがて真柴老人が残した手帳をめぐり、丹羽たちは隠されたマッカーサーの金塊について調べ始めるが…。

現代と1945年当時が交互に語られてゆく構成で、失われた遺産の行方を探す推理を楽しむというよりは、作戦をめぐる攻防や葛藤などの人間ドラマが展開してゆく感じです。1945年に登場した人物が、意外な関わり方をするといった面白さはありましたが。

正直、登場人物たちにあまり共感できなくて、今ひとつ入り込めませんでした。特に、現代編の私の丹羽はもっとも嫌いなタイプですし、あんな奴になぜ真柴老人があれを託す気になったのかもわからないし。
読んでいて一番心をつかまれたのは、久枝たち女学生のこころを綴った場面です。
先生に憧れ、先生に送ってもらえる帰り道に空襲が起こって欲しいと思ったり、過酷な作戦の不安よりも、遠出に心をわくわくさせたり、純粋さと残酷さを併せ持つ少女たちの心は、男たちの戦いよりも、より現実味を帯びて感じられました。


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JUGEMテーマ:小説全般


2011.08.12 Friday

「ちょちょら」 畠中 恵

畠中恵さんの時代小説「ちょちょら

江戸留守居役は、幕府から仰せつかる「お手伝い普請」を逃れるため、あらゆる情報やツテを使い、自分の藩が普請を逃れるよう画策するのが役目。一旦、普請をおおせつかれば費用は藩の財政を揺るがすため、どの藩も必死で優秀な人材を当てている。主人公新之介は、亡くなった兄の変わりに江戸留守居役を拝命するが、自他共に認める平々凡々な人間。留守居役の組合では、美丈夫岩崎を初め他の藩の留守居役たちに鍛えられるものの、ある日藩の存続を揺るがすほどの普請事業が計画されていると知り、新之介一同は普請を避けるべく奔走するが、新之介は藩すべてが普請から抜けるという大胆な策に打って出ることに…。

うーん、タイトルと表紙イラストにだまされた…。
お話自体は面白いのです。
ただ、表紙から受ける印象と違う。
「しゃばけ」の痛快感や「アイスクリン強し」の爽快感はない。
「こいしり」のように事件の合間の、切ない恋心もあまり出てこない。
幼なじみ千穂との恋愛模様がもう少し描かれるかとおもったら、それもなく、あくまで主人公の新之助の江戸留守居役としての成長と、藩の危機を救うべく新之助と仲間たちの奔走する姿が描かれています。

江戸留守居役の画策や情報合戦、政治的駆け引きの様子などはおもしろかったですが、事件の解決がすっきりせず、もやもやしたものが残ります。重々しい題材と新之介のキャラクター、両方が生かしきれてないような気も。
新之介が実はできるやつで、飄々としながら完璧に計画を遂行する…。という方がすっきりするような気がします。
いや、面白くはあるのですが…。

ちょちょら
ちょちょら
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畠中 恵 新潮社 売り上げランキング: 1875


「しゃばけ」以外の畠中作品
「こいしり」→
「こいわすれ」→
「まんまこと」→

「つくもがみ貸します」→
「こころげそう 男女九人 お江戸恋ものがたり」→

「アイスクリン強し」→
「若様組まいる」→

JUGEMテーマ:時代小説

2011.08.08 Monday

中国の不条理で怖い昔ばなし 「李白の月」 南 伸坊

シンプルでユーモラスなイラストが特徴の南伸坊さんですが、実は酒見賢一の小説「墨攻」の挿絵を担当していたり、奇異小説を漫画化た作品も多いのだそうです。そんな南伸坊さんが、中国の奇怪な物語をあつめて描いたのが「李白の月」不条理でユーモラスな中国の奇譚を独特のタッチで描いています。

どれくらい不条理かというと、「ある男が盗賊だと思い近づいてくるものを切ると、それは蝶々に変化し、その蝶々が脇にふれたために死んでしまった。」だの、「主人公が大きなハマグリの中にあった剣をとりだし、家に持ち帰ると、突然父母の首が落ちた」といった「なぜそんな展開に?」と首を傾げたくなる話ばかり。

奇怪で不思議な体験をすると必ずといっていいほど当事者や周りの人間に被害が及びます。
化物などに襲われるのではなく、ただちょっとした奇異に遭遇するだけで簡単に人が死んでしまうのです。
それだけ、昔の中国では不可解な出来事を「死」に値するくらいの出来事だと思っていたのでしょうか…

また、その他にも夜に首が胴体から離れて飛んでいく女や、人の顔のような花が咲く木の話など、人間離れした生き物の話もでてきます。これは、古い中国の奇書「山海経」で紹介されるものに近い。
どこか遠くには、きっと自分たちとは変わった生き物がいるに違いないと想像され、不思議なものたちがつくられたのでしょう。

李白の月
李白の月
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南 伸坊 マガジンハウス 売り上げランキング: 306747


山海経」で紹介された生物は、「十二国記」にも登場します。


JUGEMテーマ:歴史


2011.06.21 Tuesday

「日本人の叡智」 磯田 道史

今こそ、過去の人々が残してくれた言葉、「日本人の叡智 (新潮新書)」が必要だと思います。
「日本人の叡智」は、「武士の家計簿」の磯田道史先生が、古文書の中に埋もれた有名無名の人々の言葉を丹念に拾い集めた名言集。人物のひととなりや、その言葉が言われた背景を、磯田先生が簡潔にわかりやすく解説してくださっています。

ちょうど震災後ひと月くらい後に「日本人の叡智」は刊行されました。読んでみると不思議と今の時勢にぴったりはまるような言葉が多くて驚きました。過去の人々は、様々な困難に遭いながらも這い上がり、困難から学び、生き方のヒントを後世に伝えようと文字に残してくれました。私たちはまた、その遺産をきちんと受け継いで、そこから学び取らなければならないでしょう。

すばらしい言葉ばかりですが、その中でも今のご時世、ちょっと元気がでそうな言葉を紹介します。

本気で辛抱してりゃ、自分の目には見えなくても、畳の目のように物事はすすんでるんですよ(古今亭志ん生)

古今亭志ん生は言わずと知れた落語の大名人。破天荒な貧乏暮らしをしながらも、誰にも負けない愛嬌と、懸命な落語の稽古で名人に登りつめた人。磯田先生はこの名人の言葉に「本気の辛抱とともに楽天的なずぶとさも要る」と結んでいます。

日本人の叡智 (新潮新書)
磯田 道史 新潮社 売り上げランキング: 7584


びんぼう自慢 (ちくま文庫)
古今亭 志ん生 筑摩書房 売り上げランキング: 46230


あと、わたしが個人的にツボだったのは、昭和の名経営者・土光敏夫さんの言葉。
会議は二時間以上してはならない
今の経営者連中に聞かせてやりたいです。本当に会社ってところは無駄な会議が多いんだから!ヽ(`Д´)ノ

今まで知らなかった、歴史に埋もれた人々の名言と生き様にふれられて、短い文章ながらも感動の連続でした。
特に戦時中、なり手のいない沖縄県知事を引き受けた島田叡さんの生き様に感動しました。

磯田道史先生著作
『無私の日本人』→
『歴史の愉しみ方 - 忍者・合戦・幕末史に学ぶ (中公新書)』→
『武士の家計簿」―「加賀藩御算用者」の幕末維新』→
『殿様の通信簿』→
『江戸の備忘録』→

JUGEMテーマ:人物伝
JUGEMテーマ:心にきた名言


レビューポータル「MONO-PORTAL」

2011.05.21 Saturday

『若様組まいる』 畠中 恵

明治の西洋菓子職人とその仲間たちの活躍を描いた「アイスクリン強し」の続編「若様組まいる
続編と言っても時間軸は「アイスクリン強し」より少し戻って、菓子職人ミナこと皆川真次郎の友人・長瀬をはじめとした元旗本の若様たちの巡査教習所時代のお話です。

元旗本の若様たちも明治の世ではなかなか生きづらい。
元家臣たちの面倒をみなくてはならないし、幸い、長瀬たちの仲間は親が官吏として採用されたため、屋敷を手放さずにすんだものの、生活は苦しく、自由な未来を選べない。

幕府側の武士が明治政府の官吏となれたのは三割程度。
それでも「武士の家計簿」の猪山家のように、よほど能力がなければ旧幕側は出世もままならなかったのだとか。
ひどいところでは娘を吉原へ売っぱらって対面を保とうとする家もあったようです。

消去法ではあるものの、長瀬たちは、自分たちの進むべき道を選び、努力を重ねていきます。
しかし、教習所では次から次へトラブルが。仲間のひとり、福田の恋人が結婚させられそうになったり、教習所のNo.2、幹事ににらまれ、商人の息子・姫田が合格するよう指導を頼まれたり、射撃の授業中、姫田が銃で打たれたり…。どうやら教習所の中に流行りのピストル強盗と通じて銃弾の横流しをしているものがいるらしい。

様々な困難に見舞われた若様組、果たしての彼らは無事に卒業できるのでしょうか…

時代小説というよりも、青春小説と言った感じでした。禁止されている食べ物や酒を隠して仲間で楽しんだり、最初は薩長・旧幕・平民とにらみ合っていたのだけれど、みんなで協力して困難に向かうことで仲間意識や団結力がでてきたり。若い人達がエネルギーや鬱屈を持て余しながらも前に進んでいく姿は明治でも現代でも感動させられます。


若様組まいる (100周年書き下ろし)
畠中 恵 講談社 売り上げランキング: 92470



アイスクリン強し
アイスクリン強し
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畠中 恵 講談社 売り上げランキング: 70778


「アイスクリン強し」→
「若様とロマン」→

JUGEMテーマ:小説全般

レビューポータル「MONO-PORTAL」

2011.05.10 Tuesday

「蜻蛉日記をご一緒に」 田辺聖子

田辺聖子さんの古典は面白い。
難解な古典をわかりやすく、ユーモアあふれる文章で紹介してくれるので、ちっとも堅苦しくなく、古典文学を楽しめます。「蜻蛉日記をご一緒に」は、もともと講演会の内容を書籍化したものなので、口語体で書かれているのでわかりやすく、内容は多いですが、するするっと読めてしまします。

しかし、題材となった「蜻蛉日記」。実はあまり好きではありませんでした。
というのも、内容がただただ「夫への愚痴と非難を書き綴る日記」だからです。
それに、夫の愚痴ばっかりこぼしていたせいか、息子の道綱はマザコンのアホ息子に育ってしまったりしたので、なんで千年前の女のぐちをわざわざ読まなきゃならんのだ、と思っていたのです。
(兼家の息子には有名な藤原道長とか、歴史的にすごいひとが多いのに、道綱は気はいいけれど仕事ができなかったらしい)
今で言ったら奥さんが夫の愚痴をブログに書いたり、子供に自分の恨みつらみをこぼしているようなもんです。

ただ、蜻蛉日記の作者(本名は伝わっておらず、通常兼家夫人もしくは道綱母と称します。)は非常に文才に優れていた方だったので、千年後も読み続かれていたのだそうです。田辺聖子さんの解説によると愚痴や非難文の中にも自然の描写がすばらしかったり、年をとるにつれて夫との仲を客観的に描写できるようになる変化など、いろいろと面白みのある作品なのだそうです。解説によると彼女のつくった歌はいくつもの掛詞や季節の言葉を幾重にもかけ合わせて巧みなものだったようです。

歌詠みとして才能があり、プライドの高い蜻蛉夫人は夫・兼家の浮気や自分のところへ通ってくれない切なさを上手いこと甘えられずに、やっと夫が来ても嫌味っぽい歌をつくったり、すねて相手をしなかったりします。読んでいくうちに「この人もっと素直になればいいのに…」と思ったりするのですが、パートナーに対してこんな態度にでることは、現代の私たちにも多々あるかと。

田辺聖子さんはそんな蜻蛉日記の作者を現代の女性の心情とも共通する部分や、男と女の考え方のちがいなど、面白く、興味深く伝えてくれています。やっぱり千年たっても女というものは変わらないんだなあ。(^^;)

蜻蛉日記をご一緒に (講談社文庫)
田辺 聖子 講談社 売り上げランキング: 139872


蜻蛉日記 (角川ソフィア文庫―ビギナーズ・クラシックス)
角川グループパブリッシング 売り上げランキング: 58504


田辺聖子作品感想
「おちくぼ姫」→
「孤独な夜のココア」→
「ほどらいの恋」→
「芋たこなんきん」→
「ジョゼと虎と魚たち」→
「薔薇の雨」→
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2011.02.02 Wednesday

「江戸の忘備録」 磯田 道史

「武士の家計簿」―「加賀藩御算用者」の幕末維新』の磯田先生が送る、戦国から江戸、明治の古文書から読み解いた歴史秘話エッセイ「江戸の忘備録」。ひとつひとつの話が短く、わかりやすいので、歴史をあまり知らなくても楽しめる本です。古文書から垣間見る昔の人々の暮らしは、当時の重要な事件から、どうでもいいようなことまで種々雑多。

・大河ドラマ「江」の夫、秀忠は真面目人間


秀忠さんは真面目な秀才タイプで、出張先で父親の家康が斡旋した女性に手をつけず、そのまま返してしまう堅物だったらしい。でも家臣には慕われていたようで、家康が一度秀忠を廃嫡しようとしたときは、家臣団がなんとか家康を説得したのだとか。偉大な父親と有名な息子に挟まれて歴史的には影がうすい秀忠ですが、二代目としてなかなか優れた人物ではあったようです。

・今も昔も同じこと


江戸時代にも単身赴任があり、地方の武士達は参勤交代について江戸に行くこともあったそうで、残してきた家族にあてた注意事項や老親の介護を頼むなどの手紙が残されています。江戸時代は結構女性の立場が強かったので、親孝行はマスト業務だとしても、ふんぞりかえって嫁に介護を丸投げってわけにはいかなかったようです。

それと、教育に関しても現代人以上に子どもの教育にお金をかけていたのだとか。「武士の家計簿」にも記載がありましたが、江戸時代は子どもの教育に家の存続がかかっていたわけですから必死で勉強させたのでしょうね。同じお金をかけても、回収率(?)は現代の方が格段に低そうですが…

それにしても磯田先生の好奇心が実にいろんな方向にを広げられています。
研究室の大そうじをするのがいやで、古文書を調べているうちにおもしろい記述に出くわしたり、学生たちと男色の資料を読みふけったりしています。読まされた学生さん達、どんな気持ちだったんだろう…(^^;)


磯田先生はあとがきで、「牛が草を食んで美味しい乳を出すように、古文書を読みといて噛み砕き、世の人に伝えておもしろい出来事を伝えたい。」ということをおっしゃっていました。
確かに、そこにどんなおもしろいことが書いてあったとしても、素人が古文書をみてもなんのこっちゃかわかりません。磯田先生はそんな歴史と現代をわかりやすくつなげる語り部の役割をになってくださっているのだと思います。


江戸の備忘録
江戸の備忘録
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磯田 道史
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「歴史の愉しみ方 - 忍者・合戦・幕末史に学ぶ (中公新書)」→
「殿様の通信簿」→
「武士の家計簿」―「加賀藩御算用者」の幕末維新』→
「日本人の叡智」→
「無私の日本人」→

JUGEMテーマ:歴史

2010.12.28 Tuesday

「殿様の通信簿」 磯田 道史

武士の家計簿」からすっかり磯田先生のファンになり、現在先生の著作を漁っているとろです。
今回読んだのは「殿様の通信簿」。面白いタイトルですが、元ネタは実際に江戸時代に書かれた殿様の行状を記した古文書で、なんと隠密(!)が調査した極秘資料なのだそうです。

殿様の通信簿」には殿様の性格や、その行状、領地の内情まで詳しく書かれています。なんてったって隠密がしらべたのですから、その信ぴょう性は高いといえるでしょう。
我々のよく知る水戸黄門や忠臣蔵の浅野内匠頭や大石内蔵助が本当はどんな人物だったのかというと…

水戸黄門(光圀)


「女色に溺れて悪所通い」 うーん、黄門様のイメージ違いますね(^^;)。
ただ、磯田先生の解説によると、当時の殿様はほとんど外出の自由がなかったため、文化人や芸能者(能役者)などと知的な会話を楽しむにも格式張った手続きで屋敷に呼びつけないといけない。
だから、遊郭などをサロン替わりにしていた一面もあったのだとか。
黄門様は学者以上の博識だったそうですが、通信簿には「学者を知識でやりこめるのはよくない」と書かれてしまいました。

浅野内匠頭と大石内蔵助


浅野内匠頭というと忠臣蔵では、生真面目な美青年が演じてきましたが、「殿様の通信簿」によると、結構なバカ殿らしいです。(^^;)頭はいいけれど極度の女好きが高じて政務をとらず、もっぱら家老たちに任せていたのだとか。だから大石内蔵助は赤穂時代からの指導力でもって討ち入りを果たしたと。

また、刃傷沙汰や討ち入りの背景についても解説されています。赤穂は戦国時代の名残を残す藩で、そのプライドが高く、だから吉良をちょっと下に見ていたとか、また、内匠頭が辞世の句で「名残りを…」と詠んじゃったので、君主が絶対である当時の家臣たちは、その「名残り」をなんとかしなくちゃいけなくて討ち入りせざるを得なかった…とか、「忠臣蔵」という歴史的事件は様々な要因が重なって初めて起こったことなのですねえ。

武士の家計簿」でも書かれた、「先祖の功績によって武士の階級や役割が決まる」といった武士の構造についても触れられています。先祖が頑張りすぎちゃって危険な場所に生かされると貧乏くじを引いた家はずっとそのまま、損な役目を期待されておおせつかっちゃうのだとか。

磯田先生の著作
「歴史の愉しみ方 - 忍者・合戦・幕末史に学ぶ (中公新書)」→
「武士の家計簿」―「加賀藩御算用者」の幕末維新』→
「江戸の忘備録」→
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磯田道史先生著作
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「江戸の備忘録」→
「武士の家計簿」―「加賀藩御算用者」の幕末維新』→
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