『“世界一"のカリスマ清掃員が教える 掃除は「ついで」にやりなさい!』新津 春子

2016.07.30 Saturday

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    羽田空港の清掃スタッフとしてはたらくカリスマ清掃員・新津春子さんによる掃除本『“世界一"のカリスマ清掃員が教える 掃除は「ついで」にやりなさい!』を読みました。プロの清掃テクニックを家庭でも簡単にできるように紹介した本です。勉強になるし、なにより掃除が楽しくなります。

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    目からうろこの「湿り拭き」


    この本で、一番おどろいたのは、「湿り拭き」と「家庭の汚れはタオル1枚で十分対応できる」ということ。よっぽど、汚れがこびりついている場合は別でしょうが、基本はタオル一枚を上手に使えば十分なのですって。

    特に「湿り拭き」は、湿った雑巾と、乾いた雑巾を一緒に絞ることで、水分が調整できて、窓拭きの時に跡が残らないんだそうです。二度拭きの手間も無いので、掃除が簡単になりました。


    掃除用具へのやさしさ


    私が掃除でいつも困るのが、掃除が終わった後の用具。ぞうきんなどは洗って干せばいいのですが、ゴム手袋やブラシなどはついつい、なおざりになりがちでした。

    ゴム手袋も、裏表をきちんと洗剤で洗い、干しておくのだそうです。確かにこうしておけば長持ちするし、匂いもなくなって安心ですね。

    新津さんは「掃除道具も調理器具と同じように」とおっしゃっていて、なるほどなー、と、こちらも目からうろこでした。確かに、調理器具は毎回使ったら洗って片付けるのに、掃除用具っていい加減になりがちだものな。

    この本を読んでから、掃除用具もきちんとケアをするようにしています。そのほうが気持ちよく掃除ができますしね。ペットボトルを切って作ったスポンジの水切りも、愛用してます。(すごい便利!)

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    ●あわせて使うと便利


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    無性に翻訳本が読みたくなる。『翻訳百景』 越前 敏弥

    2016.07.17 Sunday

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      BSの『久米書店』で紹介されていて、気になっていた一冊。私はこれまで、あまり海外の本を読んでなかったのですが『翻訳百景』を読んだら、無性に翻訳本が読みたくなりました。
      『翻訳百景』は、小説の翻訳を手がける文芸翻訳家である越前さんが、実際に翻訳を手がけた洋書の翻訳裏話を実例を踏まえつつ書かれています。

      翻訳、というと、難しくと思われるかもしれませんが、越前さんの文章がとてもおもしろく、洋書の楽しさ、翻訳業の楽しさ(苦しさ)にぐいぐいと引きこまれていきました。

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      ダ・ヴィンチ・コードと翻訳裏話


      翻訳と一口にいっても、通訳や映画字幕、それに小説の翻訳、これらはまったく違ったノウハウが必要なのだそうです。越前さんは、小説の翻訳家として、『ダ・ヴィンチ・コード』シリーズの翻訳を手がけられています。『ダ・ヴィンチ・コード』では、馴染みのないキリスト教関連の単語をいかに日本語に(作品のイメージを崩さず)置き換えていくかが大変だったのだとか。

      実際に手がけられた『思い出のマーニー』などの文章を引用しつつ、どのように英語の文章を日本語に置き換えていくかが書かれています。

      それはなんだか、英文の世界を冒険して、自分の表現を探していく、ダンジョンのようなワクワク感があるのです。

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      翻訳者の個性


      実は、翻訳本は翻訳者によって差があります。たとえばO・ヘンリの小説の翻訳に『魔女のパン』と『善女のパン』という、反対の意味の、同じ話があります

      でも、読んでみると、どちらのタイトルにも「ああ、なるほど。」と思ってしまうのです。翻訳者によって表現が全く違うので、読み比べてみると面白いです。

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      こうした翻訳者のワザを意識しつつ、翻訳本を読めば、物語がより深く楽しめるかもしれませんね。

      翻訳関連のはなし
      「O・ヘンリー ニューヨーク小説集」
      おかゆにハチミツ?昔の児童文学の食べ物翻訳がおかしい。

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      心地よく酔える物語。「BAR追分」 伊吹 有喜

      2015.11.15 Sunday

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        また、すてきな話を読んでしまった。伊吹有喜さんの書く物語は、本当にはずれがない。読んでいて楽しくなる。まるでBAR追分のお酒のように、心地よく酔わせてくれるのです。

        「BAR追分」あらすじ


        新宿三丁目の交差点付近、昔は追分と呼ばれた場所の、裏路地は「ねこみち横丁」と呼ばれ、種々雑多な店がひしめいている。そんな、ねこみち横丁のどん詰まりには「BAR追分」という一件のバーがあった。

        猫のデビイに導かれるように、ねこみち横丁を進み、BAR追分にたどり着く。「追分」とは、分かれ道のこと。人生の行く道に迷う人々が「BAR追分」を訪れ、新たな道を選んでいく。

        脚本家志望の青年・宇藤はねこみち横丁のホームページ製作をきっかけに、ねこみち横丁の管理人としてこの横丁に住むことになった。BAR追分は昼はバール(食堂)で夜はバーという変わったお店。宇堂はBAR追分に訪れる人のさまざまな人生を垣間見るようになる。

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        ねこみち横丁に住みたい


        まず「BAR追分」を読んでおもったのは、この横丁に住みたいってことでした。バーには猫、個性的な横丁のおっちゃんたち、住人専用の秘密の銭湯、バールの店長・桃ちゃんの美味しそうなまかない、そして、夜のバーでのおいしいお酒と、謎の美女・BAR追分オーナー…。

        ああ、こんな横丁、実際にあるのだろうか、今度新宿へ行ったら探してみようか。でもきっと、猫のデヴィが気に入った相手でないと、辿りつけない、そんな気がします。

        伊吹有喜さんの作品は本当に好きだ〜(*´∀`*)。読むと幸せな心地になる。「BAR追分」、ぜひ続編をお願いします。だって横丁のメンバーたちやバーテンダーの田辺さんや、BAR追分オーナーのこととか、もっともっと知りたいし、読みたいんだもの。

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        伊吹有喜作品 感想


        『彼方の友へ』
        『今はちょっと、ついてないだけ』
        『BAR追分』
        BAR追分シリーズ2『オムライス日和』
        BAR追分シリーズ3『情熱のナポリタン』
        『ミッドナイト・バス』
        『なでし子物語』
        『風待ちのひと』


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        「明日の子供たち」から、「施設で育った子どもの自立支援」を読む。

        2015.11.12 Thursday

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          有川浩さんの「明日の子供たち」を読むまでは、児童福祉施設がどんなところかなんて、全く知りませんでした。唯一、児童養護施設で知っている知識は、ジーン・ウェブスターの「あしながおじさん」と「続あしながおじさん」くらいです。

          あしながおじさん」の中で、主人公ジュディは親切な評議員(あしながおじさん)によって、大学へ進むことができました。

          けれど、ジュディのように、運に恵まれなかった場合、一定の年齢に達すると、施設を出なければなりません。これは何も、100年前のアメリカの話ではなく、現代の児童養護施設施設でも、同じ条件なのだそうです。


          「明日の子供たち」を読んでから


          「明日の子供たち」で、それのことを読んで驚きました。現在の日本でも、高校進学しない場合は中卒で、高校進学後も、高校卒業時点で子供たちはそのまま、施設を卒業することになります。

          「施設で育った子どもの自立支援」は、施設を去ってからの子供たちの告白と、児童養護施設、自立支援の関係者による文章で構成されてていて、初心者でも読みやすいです。

          それにしても、子供たちの告白には衝撃を受けました。社会に出ても生活苦のため犯罪に走ったり、風俗で働かざるを得なくなったり、パートナーから暴力を振るわれたりと、悲惨なことも書いてありました。

          施設で育った子は、決して「かわいそう」ではないのだけれど、ハンデはある。相談できる大人がいない社会にいきなり出て行くことは、リスクを伴うこともあるのですね。そういうことも、初めて知りました。

          この本では、施設で育った子供たちのアフターケアについても書かれています。「アフターケア相談所ゆずりは」では、児童養護施設を退所した人向けの相談、ケアを行っているそうです。


          子どもの未来をあきらめない 施設で育った子どもの自立支援
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          有川浩さんの作品のすごさは、作品そのものにもあるのですが、読者がその物語の背景を知りたいと強く思うこともあるのじゃないでしょうか。有川浩さんの本を読むと、巻末にある関連書籍を読んで、その世界のことをもっと知りたくなるんです。

          明日の子供たち 感想→

          明日の子供たち
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          「空飛ぶ広報室」 有川 浩

          2015.11.04 Wednesday

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            「空飛ぶ広報室」読了。
            ドラマ化後に原作を読むことになったのですが、ドラマスタッフがこの本を、愛情をもってつくってくれたのがわかるし、有川浩先生の書く物への思いがとても伝わる物語でした。

            「空飛ぶ広報室」あらすじ


            空井大祐は、航空自衛隊の花形、ブルーインパルスへの夢を交通事故により絶たれてしまう。茫然自失となった空井が配属されたのは、空幕広報室。詐欺師と呼ばれる室長、鷺坂を筆頭に、個性豊かな広報室のメンバーたち。

            ある日、帝都テレビから、ディレクターの稲葉リカが密着取材のため空爆広報室を訪れる。自衛隊を「人殺しの軍隊」と言い放つリカに、空井は激昂するが、上司の鷺坂にさとされる。自衛隊に偏見をもつ、リカのような人間にこそ、アピールすることが広報官の勤めだと感じた空井は…

            空飛ぶ広報室
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            小説とドラマ


            私は、ドラマを先に見てから小説を読みました。ドラマ自体は面白かったものの、小説からの改変が決行されているのではないかと心配していたのです。(フ○テレビは過去にこんな改悪ドラマもありましたから…

            だがしかし!オリジナルの話や微妙な設定追加はあるものの、ここまで原作に忠実に、映像として面白くなったドラマ、久しぶりに観た気がします。空井を含む広報官たちのキャラクターも核がきちんとしている。原作を読んで改めて、ドラマのクオリティの高さと、原作へのリスペクトが感じられました。

            「あの日の松島」


            物語の最後、空井とリカが再会する松島基地。松島に移動した空井(ここでも広報官)から、「あの日の松島」の話を聞くリカ。ブルーインパルスだけは被災を免れたものの、人命優先のため飛行機を失った松島基地。自らも被災者であるのに、家族をおいて救助活動に従事する自衛官たち。

            街の瓦礫を拾うにも自衛隊という組織の規定では動けないのを、当時の責任者が「基地から流出した資材を探す」という名目で、街のがれき撤去を行ったこと。

            辛いものをたくさん見ているのに、ちょっと休んだら、また作業に出ていこうとする隊員たち…。

            もうね、この章を思い出して、感想を書いているだけで、涙がでてくるんですわ。

            ここで有川先生が書きたかったのは、自衛官たちは、我々と変わらない普通の人々であること、けれど有事の際には、何を置いても我々(もちろん、自衛隊を否定する人々も含む)を守ろうとしてくれる覚悟をもっている人々であること。なのじゃないかと思うのです。

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            作中ドラマ「報道記者、走る」は有川さんの自衛隊恋愛小説「ラブコメ今昔」の中の短編、「広報官、走る!」のタイトルから取ったのかな?こちらは自衛隊の恋愛を扱った短編ですが、広報官の活躍する話もあります。こちらもおすすめ。

            ラブコメ今昔 (角川文庫)
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            有川作品感想


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            三匹のおっさん
            キケン
            ヒア・カムズ・ザ・サン
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            この本を読んで、知れてよかった。児童養護施設のこと。「明日の子供たち」 有川 浩

            2015.10.20 Tuesday

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              この本を読むまで、児童養護施設について、ほとんど何も知りませんでした。有川浩さんの「明日の子供たち」は児童養護施設を舞台にした小説で、ジーン・ウェブスターの「あしながおじさん」以来の名作だと思います。

              「明日の子供たち」あらすじ


              児童養護施設「あしたの家」。新人職員の三田村は、着任早々、先輩の和泉から「かわいそうな」子供たちの乱雑な靴を直したことでとがめられる。親切心なのに、注意され納得がいかない。

              しかし、部外者だった三田村の考えと、施設の現状は大きく違っていた。

              友達のこと、進路、親との関係。やがて三田村は子供たちを通じて彼らの成長と、本当の思いを知ることになる。
              悩みながら、ぶつかり合いながら、子供たち、そして職員たちも成長していく。



              決して「かわいそう」なんかじゃない


              新人職員の三田村は最初、施設で暮らす子供たちのことを「親と暮らせない、かわいそうな子」として認識しています。それに対し、施設の子であるカナは憤ります。

              「かわいそうな子どもに優しくしたいって自己満足」だと…。
              カナは育児放棄の母親に学校に行かせてもらえず、幼いころから家事をやらされ、施設に入ってようやく幸せを手に入れます。

              でも三田村も含め、読んでいる私にも偏見を持っていた「家族と暮らせない子どもは、かわいそう」だと思い込んでおり、そんな偏見をカナのことばはぶち破ってくれました。


              明日の子供たちの現状


              「明日の子供たち」では、施設の子供たちが直面する問題についても描かれます。これらのこと、「明日の子供たち」を読むまで、全く知りませんでした。

              ・高校受験に失敗すると、中卒のまま、施設を退所しなければならない
              ・高校を卒業すると、自立を余儀なくされる

              この現状には驚かされました。施設の子どもたちは不幸ではないけれど、普通の家の子に比べてハンデを背負っているのは確かなんですね。

              ジーン・ウェブスターの「あしながおじさん」でも、高校を卒業したら何の社会訓練も行われぬままに世間に放り出されるのだと、ジュディが語っていましたが、子供たちが、100年前と同じ保証しか受けられないのが現状なんですね…

              明日の子供たち

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              ランドセルより、現金


              タイガーマスクで有名になったランドセル寄付は、ほんというとお金のほうがありがたい
              「あしたの家」の施設長が語っていますが、ランドセルの購入代金は、予算としていただけるのです。だからランドセルそのものを贈られると、すでに購入してしまった後では、引き取り手を探さなければならないのだそう。
              (そこで職員の仕事が増えたり、配送料もでてくるでしょうね)

              下手な同情や思い込みで寄付の品々を贈る前に、きちんと、相手のニーズにあったものを贈るべきだと実感しました。

              明日の子供たちの進路


              物語の中で、子供たちの高校卒業後の進路について書かれていて、その中でヒサの選択は「防衛大」でした。防衛大は無料で学べて、しかも手当がつくため、ほぼ天涯孤独のヒサは、当然の選択肢として防衛大を選びます。

              最近、子どもの貧困、集団的自衛権などが問題とされています。読みようによってヒサの進学は、そうした問題を明示しているようにもおもえます。

              「経済的に恵まれない子どもが自衛隊に行き、海外で殺される」のだと、一部の人たちは気炎を上げて反対するかもしれません。

              私も、貧困→自衛隊→自衛権で海外で殺される→問題と、いった図式を考えたことがあります。

              でもね、読んでいて、施設の子供たち、ヒサやカナ、杏里たち、ひとりひとりの子供たちを知ると、どうも違うんじゃないかなあ、と。確かにヒサには経済的ハンデがあって、防衛大を選んだけれど、それは彼の中で一番いい選択だったからだと思うんです。

              確かに子どもの貧困、集団的自衛権は問題だけど、それこそ部外者が「かわいそう」で片付けてはいけないんじゃないかと。

              じゃあ、私たちに何ができるか、と考えたら、やっぱり「知ること」なんじゃないかな。

              「明日の子供たち」文庫


              「明日の子供たち」文庫版が出ていたので読んでみました。この物語は、児童養護施設の女の子が有川浩さんに書いた一通の手紙がきっかけでした。自分たちのことを、児童養護施設を知ってほしいという思いに有川さんが応える形でこの物語はできました。

              文庫版の解説では、有川先生が「明日の子供たち」を書くきっかけとなった女の子(今は卒業して2018年現在大学生になっています)が手紙を贈った経緯を書いてくれています。

              コップに水が半分入っていて、それを少ないか、多いか、ちょうどいいか、人によって様々ですが、私は児童養護施設にはいれて幸せだったと。

              文章からは彼女のまっすぐな思いが伝わってきて、涙がとまりませんでした。彼女は運命を憎むよりも、幸せや喜びを伝えたいと書いていました。そしてそれは、有川先生がこれまで文章で伝えてきた思いと同じなんです。

              嫌い、憎いをぶつけるよりも、喜びと幸せを伝える2人が出会ったからこそ、「明日の子供たち」という奇跡の物語が作られたのだと思います。

              明日の子供たち (幻冬舎文庫)

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              空の中
              レインツリーの国
              三匹のおっさんふたたび
              三匹のおっさん

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              O・ヘンリーといえば、ニューヨーク 「O・ヘンリー ニューヨーク小説集」

              2015.09.30 Wednesday

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                こんな本を待っていたのです。「O・ヘンリー ニューヨーク小説集 (ちくま文庫)」は、O・ヘンリーの小説の中で、ニューヨークを舞台にしたものを厳選し、当時の時代背景や風俗などの解説文が加えられています。


                普遍的なテーマと、時代背景


                100年ほど前のアメリカ、都市部ではショップガールやタイピストなど、女性の社会進出がはじまり、女子の教育も盛んになってきた頃です(あしながおじさんも20世紀初頭)。ショップガールが玉の輿に乗るため、客の男たちを選んだり、タイピストだけでは食べていくのもカツカツだったり、当時の女性のリアルな姿が描かれます。

                このあたりは時代が変わっても、女性の本質をついているので、読んでいて違和感はないのですが。それでも、コニーアイランドという遊園地が当時から庶民向けの遊園地だったり、そうした背景を知っていると、より作品に深く入り込めます。


                翻訳の妙、解説の発見


                今回、この本の翻訳をしたのが戸山翻訳農場というO・ヘンリー作品の翻訳とその時代背景を紹介しているユニットで、物語ごとに訳者が異なります。今まで、O・ヘンリー作品は、数種類の出版社のものを読んできましたが、翻訳によってこんなにも違いや個性がでるものなのだなあ。と驚きます。

                「魔女の差し入れ」(オールドミスが恋愛妄想の果ての親切心で、逆に不幸になる話)は、以前「善女のパン」という真逆のタイトルでも読んだことがあります。まあ、読んでみるとこのタイトルでも納得なのですが。

                「ハーレムの悲劇」という作品は、この本を読むまでずっと、アフリカ系アメリカ人夫婦の話だと思っていました。でも、解説を読むと、O・ヘンリーがこの作品を書いた1900年代初頭は、ハーレムはまだ、白人の居住区だったそうで、その後、住宅の供給過多による価格低下でアフリカ系アメリカ人が住むようになったのだとか。

                そんな時代背景、普通の翻訳ではなかなか読めませんよね。

                まあ、物語そのものは「夫が、妻のことを理解してくれない」という、現代でも通用する話なのですが。


                O・ヘンリー ニューヨーク小説集 (ちくま文庫)
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                「ミッドナイト・バス」 伊吹 有喜

                2015.06.04 Thursday

                0
                  新潟を舞台に、家族の再生とバスの乗客たちの人生の一コマが綴られる「ミッドナイト・バス」読了。

                  やっぱり、伊吹有喜さんの書く物語はいいなあ。普通の人たちの悲喜こもごもを、やさしい視点で描き出していて。どこにでもありそうだけど、気がつくと引き込まれている。おすすめです。

                  本の中には辛いこともあるけれど、読んでいて共感するし、希望をもらえます。

                  ミッドナイト・バス (文春文庫)

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                  『ミッドナイト・バス』 あらすじ


                  高速バス・白鳥交通の運転手・利一は、偶然自分の運転するバスに、16年前に別れた妻・美幸と再会する。長く心を残した元妻との再会が、利一の家族と、恋人・志穂との関係に波紋をなげかけることに。

                  父親、恋人、そして元夫として、利一は彼らとの問題に直面し、無骨ながらも彼らとの関係を修復しようとするが…。

                  家族の再生を軸に、バス乗客の人生が交錯する


                  「ミッドナイト・バス」は基本、利一と恋人の志穂、息子の玲司、娘の彩菜、そして元妻の美幸の関係とそれぞれの抱える問題について描かれていますが、その合間に、高速バスの乗客の人生の一コマが描かれます。

                  実は、その乗客たちは少しずつだけど、利一たちともつながりがあります。

                  家族の物語だけだと、閉塞的で暗くなりそうですが、そこへ、他の人の視点を加える事で、物語がやさしくなる、というのかな。

                  出てくる人がみんな、やさしいんだけど、その方向性が間違っていてすれちがってしまうのが切なく、それが少しずつ、糸をほどくように新たな関係を築いていくのが、読んでいてとてもうれしくなりました。


                  毒の人


                  伊吹有喜さんの話には、ひとり凄い毒のある人間がでてきて、その人が周りの善良な人を巻き込む展開が多いんですが、今回は故人である利一の母親が、そもそもの元凶のようです。美幸を追い出したのも祖母でしたし。ただ今回、もう死んでいるので具体的な描写はあまりなく、利一たち家族の再生に重きが置かれています。

                  けれど、彩菜があれほど美幸に頑なだったのは、おそらく毒の祖母の影響なんでしょうね。死んでからも人を不幸にしていく、そんな人間にはなりたくないなあ。

                  伊吹有喜作品 感想


                  『彼方の友へ』
                  『今はちょっと、ついてないだけ』
                  『BAR追分』
                  BAR追分シリーズ2『オムライス日和』
                  BAR追分シリーズ3『情熱のナポリタン』
                  『ミッドナイト・バス』
                  『なでし子物語』
                  『風待ちのひと』

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                  歴史と不思議の織りなす物語 『かたづの!』中島京子

                  2015.04.23 Thursday

                  0
                    戦国時代、青森・南部家に実在した女領主・寧々の生涯。それを、一本角のカモシカ「かたづの」によって語られる不思議な物語「かたづの!

                    読んでいて、どこまでが史実で、どこからが幻想なのか、まったくわからなくなり、気がつくと、遠野物語の世界へも、足を踏み入れてしまうのです。

                    「かたづの!」あらすじ


                    戦国時代の青森・八戸で、角が一本しかない羚羊・片角が、八戸南部家の姫・弥々と出会う。弥々に命を助けられた縁で、片角は城にも出入りを許され、弥々の幼い姫たちと幸せな時間を過ごし、天珠をまっとうする。

                    「かたづの」が角だけの存在なった頃、弥々の周囲では夫や息子が相次いで亡くなり、叔父である三戸領主・信直から無理難題を言い渡され、弥々は女領主になることを決意する。

                    かたづの! (集英社文庫)

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                    歴史と不思議の、美しい織物のような作品


                    「かたづの!」は史実を縦糸に、不思議を横糸にして模様を編んだ、美しい織物のような物語です。

                    八戸南部氏の女領主・弥々の波乱万丈な人生を描いた作品ですが、その一方で、遠野物語のベースとなるような、不可思議な話が随所に織り込まれ、どこからが幻想で、どこからが史実なのだか、本当にわからなくなります。

                    特に、私がすきだったのが、河童の総大将が弥々に惚れてしまい、彼女と顔立ちの似た河童の娘を娶り、弥々子と名乗らせたエピソードに興味をひかれました。実はこの弥々子は、後に利根川に住みつき、関東河童の総大将となるのです。弥々子がどれほど強いかは、畠中恵さんのしゃばけシリーズ「えどさがし」でも描かれています。

                    女領主の一代記


                    戦国時代の女領主と言えば、橘訐藺紊箘羂膨掌廚覆匹有名です。彼女たちは、家長を亡くし、家を守るため知恵を絞り、男たちを渡り合います。

                    私は女性領主たちのさっそうとした姿に憧れをもっていたのですが、「かたづの!」の弥々の女領主生活は、多難だらけで、ちっとも気の休まる暇がありません。そのたび、弥々の知恵と、かたづのの神通力で苦難を乗り越えてきたのですが、大きすぎる力は、疑心を呼び、家臣や娘たちからも距離を置かれてしまいます。

                    いくら戦国の世とはいえ、その苦悩や悲しみが、切なくて。
                    女領主は女性が活躍するというよりは、危ない橋を最初に渡るかのような、危うい場面の連続なのですね。

                    それでも、弥々は大切な人々を守るため、最後まで力をつくします。そしてまた、かたづのも、最後まで弥々につきしたがうことになります。そんな、奇妙で不可思議で、でもあたたかい絆に感動しました。

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                    中島京子作品感想


                    「のろのろ歩け」→
                    「小さいおうち」→
                    「女中譚」→
                    「冠・婚・葬・祭」→
                    「花桃実桃」→
                    「FUTON」→

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                    「鹿の王 還って行く者」 上橋 菜穂子

                    2015.04.14 Tuesday

                    0

                      「鹿の王 還って行く者」 あらすじ


                      岩塩鉱で黒犬によって移された伝染病から、奇跡的に助かった主人公・ヴァンは、同じく助かった幼女・ユナとともに、トナカイ放牧民の青年、トマもとへ身を寄せ、トナカイの放牧を手伝っていたが、呪術師スオッルに招かれた先で、ユナが何者かにさらわれてしまう。「偶然」居合わせた女狩人・サエとともにユナを追いかける旅へ。

                      一方医術師ホッサルは、黒犬病が狼と犬の混血犬によって媒介されることを発見し、核心に迫るものの、媒介者たちに捕らえられてしまう。

                      ヴァンとホッサル、全く異なる2人が会合したとき、病の謎と陰謀の姿が明らかになっていく…。

                      鹿の王 (下) ‐‐還って行く者‐‐

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                      異世界と現世は表裏一体


                      「鹿の王」の後半は、伝染病の原因と、その裏側にある、国や民族の対立が浮き上がってきます。ひとつを結び目を解くと、また別の結び目ができてしまう、そんな複雑な背景がみえてくる。普通、ファンタジーというのは、善とか悪とか、二分化された単純なものが多いですが、上橋菜穂子さんの作品は、だれも悪ではなく、視点を変えれば、だれもが悪で、善でもあるんです。

                      普通の人々が、追い詰められ、自らの氏族を守ろうとするあまり、相手を犠牲にしてもかまわない。そんな考えに取り憑かれてしまう。

                      「鹿の王」は架空の国の話ですが、一方的な支配や闘争、伝染病の蔓延は、今の世界情勢にシンクロしています。本当に人間を描いた作品には、絵空事なんてないんです。そんな中で、この物語を読むことで、自分はどう考え、どう生きればいいのか、とても考えさせられるのです。

                      人と自然との結びつき


                      人は、生きていく土地によって、食べるものも、環境も違います。育てる家畜も、馬であったり、トナカイであったり様々。

                      土地にあった作物や家畜を育て、その土地の自然を神として祀る、そんな社会環境が構築されていきます。けれど、そのシステムが無理やり変化させられてしまうとしたら、やはりそこには歪みが生じ、それが闘争の原因となっていきます。

                      鹿の王 (上) ‐‐生き残った者‐‐

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                      外伝が読みたいっ!


                      「鹿の王」発売から日も浅いのですが、もう外伝が読みたくて仕方がないんです。マコウカンの一族の話とか、サエの跡追いの話とか、あと、できればユナが大きくなった話とか、物語の世界で他にどんなことが起こっていたのか、これから起こるのか、それをぜひ読みたい。

                      鹿の王 水底の橋

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