2018.09.23 Sunday

精霊の守り人 新作外伝『風と行く者』が発売されます!

上橋菜穂子さんの代表作『精霊の守り人』シリーズ、現在はシリーズも完結し、3年に渡って放送された大河ファンタジードラマも終了しましたが、ここへきて外伝、それも長編が発表されます。

『風と行く者』では、昔なじみのサダン・タラム〈風の楽人〉と呼ばれる人々と再会し、バルサがふたたび用心棒となるところから物語がはじまるそうです。

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大きな戦争や災難が終わり、バルサはタンダとつれあい(この表現がふたりっぽくて好きです)となり、一緒に暮らしているのは解説本『「守り人」のすべて』に掲載された短編「春の光」で描かれました。

しかしまた、バルサにはやっかいな冒険が始まっているようです。タンダも着いていくのかな?でもあの体じゃあ留守番かなあ…?

おまけにサダン・タラムの頭は、あらすじを読むと「ジグロの娘かもしれない」と…。
え?どゆこと?(・。・) ジグロの娘?? …この世界にはまだまだ我々のしらない物語があるようです。

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物語ること、生きること


バルサの冒険は精霊の守り人シリーズの解説本『守り人のすべて』に掲載された短編で終わったかに見えたのですが、上橋先生によると、さまざまなめぐり合わせにより、このお話を描くことにしたのだとか。

上橋先生は、作家・上橋菜穂子に多大な影響を与えた、好奇心旺盛なお母様を亡くされ、人の生と死について考えられた本も書かれていました。人生には悲しい別れもありますが、またその一方で「めぐりあわせ」というのもあり、どんな縁がつながってこの物語ができたのか、あとがきも楽しみにしています。

まさに「物語を書くことが生きること」なのですね。

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二木真希子さんから佐竹美保さんへ


長く「守り人シリーズ」の単行本の挿絵を担当していた二木真希子さん。ジブリの優秀なアニメーターで宮崎駿の片腕とも呼ばれた女性ですが、惜しくも2016年に早逝されました。

・二木真希子さんが描かれた絵本もまたすばらしので、皆さん見てほしい…

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もう二木真希子さんによるバルサの絵がみれないのは非常に残念ですが、今回の『風と行く者』単行本の挿絵は、少年チャグムの成長を描いた旅人シリーズ(「虚空の旅人」「蒼路の旅人」)で挿絵を担当された佐竹美保さんなんですね。

これも守り人シリーズファンには嬉しい。全く知らない人があの世界を描いてほしくないという気持ちもあったので。守り人シリーズ執筆中も、ジブリの仕事で忙しい二木真希子さんからバトンを受けた佐竹美保さんが「旅人シリーズ」を描かれたので、今回もそうしたバトンが渡された感じがするのです。

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JUGEMテーマ:新刊紹介



2018.09.16 Sunday

乱歩や宮崎駿があこがれた小説『幽霊塔』黒岩 涙香

乱歩や宮崎駿があこがれた黒岩涙香の翻訳小説『幽霊塔』を読了。宝が隠された塔を巡る冒険活劇ミステリ。「幽霊塔」は少年時代の江戸川乱歩や宮崎駿も憧れた小説で、後に江戸川乱歩によりリライトされ、宮崎駿の「カリオストロの城」にも影響を与えてます。

いわくつきの時計塔、宝の謎、暗号、首無し死体、からくり屋敷など、ミステリの要素がたっぷり詰まっています。

・パブリックドメイン(0円)デジタル書籍版「幽霊塔」。明治時代の描写そのままなので読みづらいところも。

幽霊塔




『幽霊塔』あらすじ


丸部道九郎はおじが買い取った「幽霊塔」と呼ばれる時計塔を視察に行くと、そこには日影色(灰色)の着物を着た美しい女性・松谷秀子がいた。秀子は幽霊塔の内部に詳しく、道九郎にいろいろなアドバイスを行い去っていった。

やがて幽霊塔に住まいを移した道九郎たちであったが、それは様々な謎と恐ろしい出来事の始まりであった。
果たして「怪美人」秀子の正体は、また幽霊塔にまつわる宝の謎は…。

美人の謎、宝の謎、怪しげな洋館、暗号、いわくありげな人物など、ミステリの要素がふんだんに詰め込まれた作品です。

江戸川乱歩のリライト版の「幽霊塔」。物語自体を楽しむならがよいかもしれません。(舞台は日本になっている)宮崎駿の豪華イラスト解説入りです。

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明治の探偵小説


現代の我々から見るとトリックは稚拙だし、ご都合主義的な展開があるものの、謎が謎を呼ぶ展開にページをめくる手がとまりませんでした。

原作となった英語の小説から、暗号部分を漢詩風にアレンジしたり、随所に黒岩涙香の言葉のセンスが光ります。

ひとつの章ごとに山場があり、次への展開が気になるようなつくりになっていたり、私が斬新だな、と思ったのは各章のタイトルが文章中に出てくるセリフや言葉になっていて、今読むと一周回ってとても新鮮でした。

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嗚呼、面倒な明治の描写…


物語は面白いのですが、なにせ明治32年の小説なので、台詞回しや表現が現代とまったく違って読みづらいことといったら…!
しますのサ」「シテ見ると」など、芝居がかった台詞回しや現代では使われない表現など、いちいち頭で現代の表現に変換しながらでないと先に進めず大変でした。

話の展開が面白いので早く読みたいのに、描写がそれを許さない…。

あと、「舞台がイギリスなのに登場人物が日本名」なのには参りました。
涙香の時代は名前や周囲の描写を日本風にアレンジしないと読者が想像できなかったのでしょうが、現代では逆にそ場面や人物が想像しづらく、読みながら「どっちやねん!」とツッコミをいれながら読んでいましたよ…。

「盆栽室」…温室?イギリスには盆栽ないやん…
「衣嚢」…ポケットのことらしい。わからん…
「夫で」…それで。読めん!
「了う」…しまう。終了→終わり→終う→しまう…

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『幽霊塔』と『カリオストロの城』


『幽霊塔』を読んでいて「あれ?この設定カリオストロの城みたいだな…」と思っていたら、調べてみると宮崎駿は幽霊塔からインスピレーションを受けて『カリオストロの城』を作ったのだそう。

宝が隠された時計塔、詩文のような暗号、機械のような時計塔内部、骸骨に部屋の中に落とし穴など、カリオストロの城でみられた設定が随所に出てきます。

少年時代のの宮崎駿が、いかにこの小説に魅入られていたかがわかります。

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JUGEMテーマ:ミステリ

2018.09.11 Tuesday

停電時の携帯充電には、ソーラーモバイルバッテリーが便利!

北海道の地震で停電の被害、被災された方々が一日も早く復興するよう祈りつつ、名産品を買ってほそぼそとですが応援していくつもりです。

さて、今回は私が使っているソーラーモバイルバッテリー、太陽光発電の携帯充電器についてお話したいと思います。東日本大震災以降、ソーラーランタンや携帯の充電可能なソーラーライトなど、いろいろ買い求めてきました。

折りたたみ式ソーラーライト。これも便利なので広まって欲しい…。

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こうした外出時に使える携帯充電器もいくつか持っていたのですが、もし、モバイルバッテリーの電気が無くなったら…と考えると恐ろしくなり、太陽光で充電できるタイプのモバイルバッテリーに買い替えました。

通常のモバイルバッテリーも捨てがたいのですが…
・軽量(持ち運びに便利)
・充電時間が短い
・大容量(タイプによっては充電2回くらいの容量があるものも)

しかし、ソーラーモバイルバッテリーにはそれらを覆すだけの魅力があります。それはなんと言っても
太陽光さえあれば、何度でも使えること。(限度はありますが…)

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太陽光による充電は時間がかかるけど、このソーラーモバイルバッテリーは、
・太陽光充電のほか、コンセントに繋いで充電も可能
・大容量の割に軽量
・カラビナつきで持ち運びも便利
・LEDライトつきで緊急時の照明に

充電器のLEDライト。暗闇でこれだけ明るい!
充ソーラーモバイルバッテリーのLEDライトをつけた様子

普段は普通にコンセントから充電して使い、停電など有事の際には太陽光を利用するといった2種類の使い方ができるのはありがたいです。

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JUGEMテーマ:天変地異、災害

2018.09.04 Tuesday

メイドとお姫さま。『小煌女3』海野つなみ

童話『小公女』をベースに海野つなみさんが描く『小煌女3』。舞台となる古き良きイギリスの生活スタイルと未来のSF描写が違和感なく融合した世界観が魅力で、主人公たちが生活する未来世紀のロンドンをいきいきと描き出しています。

『小煌女3』あらすじ


故郷の星トアンが消滅し、たったひとり地球に残された少女レベッカ。彼女は地球に帰化して母校のメイドとなり、おだやかな日々を送っていた。しかし、彼女のまっすぐな正義感は周囲の反感を買ってしまい、教師つきメイドからハウスメイドに降格されてしまう。

彼女をトアンの生き残りだと疑うシクサは、学校に忍び込みレベッカと接触をはかるものの、彼女は自分をトアン人だと認めない。シクサは彼女の監視をするが、彼のミスでレベッカは窮地に陥ってしまう。

一方、オナスンとサリーは急接近。屈託のないオナスンはサリーをハロッズに誘う。サリーはデートのようにやさしく扱われてオナスンのことをすきになりかけてしまう。けれど自分はだだのハウスメイド。「自分が気に入られるはずがない」と思い悩む。

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メイドとお姫さま


海野つなみ先生は「小公女」をモチーフにこの物語を描いたそうですが、小公女セーラには彼女を助ける隣人カリスフォード氏から食事やプレゼントが贈られます。レベッカも隣人のシクサが彼女の境遇をみかねて食事やベッドなどさまざまな贈り物をします。

サリーもご相伴に預かるのですが、「もしかしたら」と自分の部屋のドアを開けても奇跡は起こらなかったのです。
「そこらのハウスメイドに 誰が どんな魔法をかけてくれるというのでしょう」


レベッカのことは大好きだけど、もともとの立場が違う…。オナスンは優しくしてくれるけれど、それは自分にだけでなない。頭ではわかっているけれど、そんな自分がみじめになってしまうサリー。

レベッカはレベッカで、自分の元いた立場に苦しんでいるのですが。

はたして、レベッカの正体はジノン王女なのか。もうひとつのトアン人、神官たちが地球へやってくることで真相が明かされていきそうですが…

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海野つなみ先生はこの他にも童話や日本の古典をモチーフにした作品や、コミカルな漫画まで、幅広いジャンルを独自の視点で描いています。『逃げるは恥だが役に立つ』しかしらない方にもぜひ読んでいただきたい。

多様性も海野つなみ作品の魅力のひとつなのです。

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小煌女2→
小煌女1→
回転銀河1〜4→
回転銀河5→
回転銀河6→
デイジー・ラック1〜2→
海野つなみ作品集「tsunamix」→
「彼はカリスマ」→
「キスの事情」→
「くまえもん」→
「豚飼い王子と100回のキス」→

JUGEMテーマ:漫画/アニメ



2018.09.03 Monday

『リーチ先生』原田 マハ

「リーチ先生」読了。明治から昭和初期にかけて新しい芸術運動として発達した「民藝運動」、その担い手として名を連ねたイギリス人バーナード・リーチ。身一つで日本へやってきたリーチと、彼を「先生」と慕う主人公との師弟愛、西洋と日本の陶芸をつないだリーチの半生を描いた作品です。

陶芸という火と土の芸術の美しさと難しさ、それに魅入られた男たちの物語が熱い物語でした。

『リーチ先生』あらすじ


滝亀之助は、高村光太郎の紹介で彼の父親・高村光雲の書生として働いていた。そこへ、光太郎がロンドン留学中に知り合ったというイギリス人青年・バーナード・リーチが訪ねてくる。幼い頃、日本で育ったというリーチは西洋と東洋の美術の架け橋になろうと、身ひとつで来日してきたという。

リーチの思想に感銘を受けた亀之助は、リーチの弟子となり共に日本での芸術活動を手伝っていくことに。リーチの活動に感銘をうけた芸術家たちが集まるようになる。

やがてリーチは自分の生涯をかけるべき仕事「陶芸」に出会う。亀之助もまた陶芸に魅せられ、リーチとともに陶芸の道を歩んでいく。日頃使う器の中に美しさを見出す「用の美」をもとめ、ついにはイギリスに窯をひらくことになる。

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私は学生時代、民藝運動に興味を持ち、日本民藝館や河井寛次郎記念館を訪れたものです。そうした民芸運動の偉人たちが出会い、芸術論を交わし、作品を作り、交流していく様子は読んでいてワクワクしました。

リーチ先生が出会ったのは、留学時代の高村光太郎、最初は口論するものの、後に盟友になる民芸運動の中心人物・柳宗悦、白樺派の志賀直哉や岸田劉生、それに同じく陶芸を志した富本憲吉、濱田庄司、河井寛次郎など。

そんな「芸術家アベンジャーズ」と言ってもいいほどの偉人たちも、悩んでもがきながら新しい創造への道を切り開いていった「青の時代」があったのですね。

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日本民藝館へいきたくなる


「リーチ先生」を読んだら実際にリーチ先生の作品がみたくなりました。都内では柳宗悦が開いた日本民藝館でリーチ先生のほか、さまざまな民藝運動の芸術家たちの作品もみられます。

収蔵品の中には名もなき陶工たちがつくった「用の美」の陶器が多数展示されています。おそらく、そのなかにはカメちゃんの作品があるかもしれません。

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2018.08.29 Wednesday

それぞれのいじめの形[映画]聲の形

私は過去いじめられた経験があります。その傷は大人になっても癒えないし、今でも相手を許さない。けれども映画『聲の形』はいじめられた人、いじめた人、それを容認していた人と、それぞれの立場を均等に描くことで「いじめの形」を示してみせています。

ああ、こんな立場で人は人をいじめていたのだな、と考えさせられました。

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『聲の形』あらすじ


あまりにも有名な内容なので割愛。
・小学六年生の石田将也は聴覚障害者の少女・硝子をいじめる、
・周りもおもしろがりのっかっていく
・いじめ発覚
・主犯格の将也にすべての責任を押し付け、今度は将也がいじめの標的に
・5年後、硝子と将也は再会し、新たに関係を築こうとしていくが…


「きれいごと」「感動ポルノ」の先にあるもの


こどもというのは、世界で一番無垢で、そして恐ろしいものかもしれません。中国の呪術で「巫蠱」というのがありますが、舞台になった教室は「巫蠱」に似てますね。狭い空間で精神的に傷つけあって、最後まで生き残った者が呪者(先生や世間)に認められる、みたいな。

『聲の形』では、こどもたちの心に毒がたまっていく様子が描かれています。いじめる相手にも理由はあるし、完全な悪ではない。(悪だったらどんなに楽か)

また、いじめられる硝子も最初は「かわいそう」と思うものの「もっとうまく立ち回ればいいのに…」と思う気持ちもありました。

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物語は成長した将也と硝子が新しい関係を築こうとしますが、周りの当事者たちにさまざまな波紋をよんでふたりは追い詰められていきます。

あがいてあがいて、絶望して、つながろうとする将也と硝子。かつていじめていた者と、いじめられていた者。かれらが破壊してしまったものを、新たに築こうとする思いはこちらにもしっかりと伝わりました。

『聲の形』もそうだったし、有川浩さんの『レインツリーの国』でも中途聴覚障害者と接する面倒くささも描いています。それを「感動ポルノ」ですべて片付けようとするのは相手を対等にみていないことになるのでしょう。

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『聲の形』は「いじめ」について、いろいろと考える作品でした。まあでも、私は許さないけどね。


これをNHKのEテレで放送するってすごいですね。さすが、「バリバラ」で某チャリティ番組を揶揄するだけあって、結構Eテレはロックなところがあるよなあ。

「バリバラ」出演者玉木幸則さんの自伝。

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2018.08.28 Tuesday

チベット医術と仏教と、ほのぼのカップル『テンジュの国2』

チベットの医師見習いの少年カン・シバと異国出身の婚約者ラティのほのぼのカップルと、18世紀チベットの暮らしが描かれる『テンジュの国2』は、チベットの人々の暮らしとが丁寧に描かれていて、旅をしている気分になれる一冊です。





医食同源と仏教


医療は食からという意味で「医食同源」という言葉がありますが、チベットでは医食同源に加えて仏教が密接に結びついています。カン・シバも薬作りや治療のあいだにお経を唱えます。

医術経典という教えでは、助からない患者さんに死期をを伝えるのも医者の大事な役目であり、死期をつげられた患者は死ぬまでに功徳を積んだりお経を唱えることで来世への支度をすることができる。それがチベット仏教の考え方なのです。

自分の死を受け入れるのは辛いことですが、「功徳を積む」ことは自分の来世や家族にも良いこととされる考え方は素晴らしいですね。私もこうありたいものです。

そしてチベットの独特な葬儀「鳥葬」についても。鳥葬は死体を鳥に食べさせるため、わたしたちはグロテスクで奇異と感じてしまいますが、自分の死体で他の生物が生かされるのは、人間が自然の一部であり、仏の教えにかなったことなのでしょうね。

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ほのぼのカップルとチベットの暮らしあれこれ


こうしたシリアスな場面の他にも、カン・シバとラティのほのぼのカップルの様子が描かれ、これがまた愛らしいんです。ラティはカン・シバの幼なじみにちょっと嫉妬しちゃうのがかわいらしい。

面白かったのが二日酔いの治療のお話。チベットの結婚式では大量にお酒が振る舞われるらしく、たくさんの二日酔いの患者が医院を訪れててんてこ舞いのカン・シバ一家。特に花嫁の父は大量にお酒を注がれるのか(あるいは飲んじゃうのか)二日酔いの症状がひどいらしいです。

また、乾燥地帯のチベットではお風呂はほとんど入らず、逆にお風呂に入ると福徳が落ちるとまで言われるほどで、夏場に水浴びをするていどだそうです。

高温多湿の日本とは全く異なる習慣なんですねえ。


テンジュの国1巻では2人の出会いが描かれます。
テンジュの国 感想→



テンジュの国1
テンジュの国2
テンジュの国3
テンジュの国4

2018.08.23 Thursday

[ここまでのドラマ感想]この世界の片隅に

現在、第6話まで放送が終わり、ドラマについて賛否両論が巻きおこっているようです。
映画『この世界の片隅に』のあまりのクオリティの高さに対して、実写だとやはり行き届かないところが目立つのかもしれません。

私が「ん?」と思ったのは、水原さんとすずさんが中学で同じクラスなことと、久石譲さんのテーマソングですね。あの当時は小学校以外は男女共学はありえないし、久石譲さんの曲は素晴らしいけれど、あんなにほのぼのとした歌を歌っていたらあの当時は「非国民!」と殴られかねないと思う。

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あと、ドラマはいいのに、タイトルがクソダサいのには我慢できませんが…。

第六話 昭和20年夏、きたる運命の日!




私も原作、映画ファンですが、そうした若干の違和感はあるものの、とてもよくできたドラマだと思いますし、役者さんたちの細やかな演技はとてもすばらしいと思います。ただ、決定的に違うのは…

映画は「すずさんからみた世界」、ドラマは「世界(視聴者)から見たすずさんの世界」


映画も漫画もすずさんという一人の女性がみた「戦中の世界と周囲の人々」で、すずさんの見て感じた世界を描いています。見る側はすずさんの視点に入り込む形で戦争を体験する。

だからこそ、2次元でありながらわたしたちは戦争を追体験することができたのでは、と思っています。

でも、ドラマではそういう描き方はできない。主人公以外の登場人物たちの感情を掘り下げないと、すずさん一人の目線では映像がもたないし、すべてのシーンですずさんが出ることになってしまうからそれでは成り立たない。

だからすずさんを中心とした周辺世界をつくることが必要だったと思うし、周囲の人々を描くことで世界にリアリティが加わっていくのは見ていて楽しい。

だから、ドラマと映画は別物だと考えたほうがいいようです。

ドラマは「あちこちのすずさん」


ドラマは現代パートの扱いが今後の課題となりそうですが、原作と全く同じことを描くわけにもいかないし、多少の改変はしかたがないかもしれません。

以前、NHKの番組で庶民の戦争体験を募集したときのハッシュタグ「#あちこちのすずさん」のように、ドラマのすずさんも「原作とは違うけれど、戦争で大変な思いをした、あちこちのすずさん」でいいんじゃないですかね。

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JUGEMテーマ:日本のTVドラマ



2018.08.16 Thursday

ゴッホを支えた日本人『たゆたえども沈まず』原田マハ

原田マハさんの『たゆたえども沈まず』読了。19世紀パリに実在した日本人画商・林忠正とゴッホ、その弟テオとの交流と、ゴッホの絵を世に出さんとする彼らの葛藤を描いた作品です。

『たゆたえども沈まず』あらすじ


加納重吉は語学学校の先輩である林忠正に呼ばれ、パリの美術商「若井・林商会」で働くことになった。19世紀のパリは世界の文化の中心であり、新興ブルジョアジーたちを中心に日本文化・美術ブーム「ジャポニズム」が流行。忠政はその流れに乗り、数々の浮世絵を販売していた。

パリの浮世絵ファンは多く、その中には「グーピル商会」の若き画商・テオ・ファン・ゴッホがいた。

彼には魂を分け合ったかのような愛する兄がいたが、画家の道を志すものの、あまりにも斬新なその画風は世情に受け入れられず、テオは友人となった重吉と忠政に兄の絵をみせることに…。

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ジャポニズムと当時のパリ


19世紀のヨーロッパといえば日本やアジアなど蔑むべき2等国の扱いだと思っていましたが、ジャポニズムの影響でパリの日本に関する関心は高く、忠政のような日本人は歓迎されていたようです。

フランスは現在でも日本のアニメ・漫画への理解が深く、すぐ自国風にアレンジする某国とちがい、作品そのものを理解しようとする気質は、このころから培われたのかもしれません。

もうひとつのジャポニズム漫画


「ニュクスの角灯」は、明治初頭の長崎で輸入雑貨を営む百年(モモさん)とそこへ雇われた不思議な力を持つ少女美世の物語。物語の中でモモさんもパリで日本美術店を開きます。当時の長崎とパリの文化風俗がよくわかる漫画。

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ゴッホ兄弟と林忠正


とにかくまあ、ゴッホ(フィンセント)がダメ人間です。19世紀の芸術家も文豪も社会不適合者ばかりですが、フィンセントもこのひとりですわ。弟テオのお金を安酒や淫売宿に使うし、「俺が売れないのはお前のせいだ!」とか言っちゃうし。

それでも、あがきながら描き出した絵は当時の新興芸術「印象派」さえも凌駕する全く新しい表現はテオも、重吉も忠政もただならぬものを感じます。

よく「生まれる時代が早すぎた」といいますが、ゴッホがまさにそうでした。まだ保守的な風潮の残るパリ画壇で、ゴッホの絵を認めさせることがいかに難しいか。

それでも辛抱強くゴッホ兄弟をささえ「強くおなりなさい」と助言する忠政と、テオを気遣う重吉。やがてゴッホ兄弟が亡くなった後、忠政たちがゴッホの絵を受け取らなかったのは「世に出すには早すぎる」と判断したからかもしれません。

彼らがもし、ゴッホの絵所有していたらどうなっていたのか。しかし現在、ゴッホの「ひまわり」は彼が恋焦がれた日本に渡り、今も人々の目を楽しませてくれています。

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ゴッホ兄弟をモチーフにした漫画『さよならソルシエ』こちらのフィンセントは天然だけども優しく明るい青年です。

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原田マハ作品
カフーを待ちわびて

JUGEMテーマ:ゴッホ



JUGEMテーマ:小説全般



2018.08.12 Sunday

夢を組む人。『活版印刷三日月堂 雲の日記帳』ほしお さなえ

川越を舞台にした活版印刷三日月堂シリーズもいよいよ完結。これまで三日月堂に関わった人々も登場し、主人公の弓子さん本人の物語が組まれていきます。

私は前回の感想で「弓子さんが幸せになりますように」と書いたのですが、今回その答えがでます。それは嬉しいような、もう三日月堂の人々と会えないのが少し切ないような、そんな気持ちです。

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『星をつなぐ線』


本町印刷の長田はプラネタリウム星空館のリニューアルに際し、創業時の星空早見盤を復刻したいと相談される。印刷に詳しい後輩の悠生のとともに三日月堂を訪れる。

その星座早見表は表の原版しか残っていない状態だったが、弓子さんが偶然が昔の星座盤をもっていたため、なんとか復刻にこぎつけることに。

『星をつなぐ線』て、すてきなタイトルです。星座を表した言葉ですが、三日月堂も活版印刷で人と人とをつなげていきますね。そして弓子さんもまた、星が好きだったお父さんとの思い出のプラネタリウムの仕事をすることになりました。星も人も、線がむすばれ、つながっていくのは読んでいるこちらも嬉しくなります。

星座早見盤とは月日のや経度の目盛りにあわせて回転させ、その日、その方角の空に浮かぶ星座をみることができるグッズ。天体観測にも利用されます。

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そして前作でも登場した悠生くんが再登場。長田さんとの会話でどうやら悠生くんは弓子さんのことが好きらしい。うまくいくといいなあ。(●´ω`●) あ、でもデザイナーの金子さんはどうなるの?彼はちがうの?

『街の木の地図』


大学生の豊島つぐみはゼミで「川越の街をテーマにした雑誌」の製作・販売を行うのだが、自己中の男子、草壁くんと、引っ込み思案の女子・安西さんと同じグループになり先行きに不安を感じつつも川越に取材にいくことに。

アルバイト先である星空館の星座早見盤がきっかけで、3人は三日月堂に見学に行き、三日月堂での体験をきっかけに「活版印刷でつくる街の木の地図」をテーマに雑誌をつくることになるのだが…。

一緒に作業をしていくうち、草壁くんも、安西さんにも最初の印象とは違う一面がみえてきて、つぐみたちはなにかひとつ、自分の中に確かなものをみつけたようです。

また、この章では以前『庭のアルバム』で登場した高校生の楓さんも登場します。
彼女もまた進むべき道がわからず、あがいていた頃からだいぶ成長していました。若者たちが成長していく姿は読んでいて楽しいなあ。

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そしてここで驚き情報。三日月堂と懇意のデザイナーの金子さんには別に恋人がいるとのこと。お相手も以前登場した(『海からの手紙』)司書の小穂さんなんですって。このふたりのなれそめも、外伝とかで書いてほしい…。

([ほ]4-2)活版印刷三日月堂: 海からの手紙 (ポプラ文庫)

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『雲の日記帳』


大学生たちがお世話になった古本屋『浮雲』の店主・水上さんのお話。彼は古本屋を営みながらひっそりと暮らしていた。彼はかつて将来を嘱望された作家候補だったが、自分の言葉が人を傷つけてしまった経験から筆を折ってしまった。ただ、店の冊子に書いている『雲日記』は評判が高く、三日月堂の弓子さんもスクラップしているほどだった。

あるとき、大学時代の友人・岩倉が訪ねてきたことで、水上の言葉を本にしたいと提案され、水上は自分の過去と向き合うことになる。

壮絶な過去を経験し、静かに人生を終わろうとしていた水上さん。彼もまた、三日月堂と出会ったことで過去を振り返り、自分の人生を見つめ直そうと考えます。水上さんは、亡くなった弓子さんの父親に状況が似ていて、2人が話すことですこし、お互いの悲しみや苦しみが昇華できたのでは、と私は思います。

この水上さんの「雲日記」を書籍化することが物語の最後の流れにつながります。

おまけ:古書店主の文章


古書店主は昔から文章が巧みな人が多く、この「昔日の客」は、かつて東京・大森で古書店『山王書房』を営んでいた関口良雄氏の随筆集。古書にまつわる日常や作家たちとの交流が洒脱な文章が多くの本好きに愛されています。

昔日の客

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『三日月堂の夢』


これまでたくさんの人の思いを活字に組んで、手渡してきた三日月堂の弓子さん。そのおかげで多くの人が救われたり、自分の道をみつけることができたのですが、最終話は弓子さん自身の物語です。

『雲の日記帳』で登場した水上さんの文章を活版印刷で本にすることになった。実は水上さんは余命わずか。彼が生きている間に本を作らなければならない。

けれどそのためには今の仕事をこなしつつ、印刷機を動かせる悠生さん、アルバイトの楓さんにも無理をさせることにもなり、弓子さんは三日月堂の今後と、じぶんの人生の岐路に立つことに。

現代の活版印刷は


「活版印刷で本をつくる」作業は現代のDTPとは比べ物にならない大変な作業。文字一つ直すにも活字を入れ替えなければならず、文字がページを挟むとその修正作業は膨大に。

だけど、古いやりかたのまま作業をするのではなく、校正、校閲までをデジタルで行い、文章の最終版を活版印刷で組めば作業時間の短縮につながるとアルバイトの楓さんが提案したことで作業は少しラクなりました。とはいえ、大変な作業にはかわりはないのですが。

古い技術と現代のシステムが合わさって「現代の新しい活版印刷」ができるのってすてきなことですね。古いばかりにしがみつくのではなく、便利なものは使っていく。これこそ温故知新の最たるものだと思うのです。

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そうしてできあがった三日月堂のはじめての本。余命の少ない水上さんは、本のお礼にと店をを若者たちに託し、弓子さんにちょっとした魔法をかけて去っていきました。

すべてが終わった後、弓子さんは悠生くんに思いをつたえようと…。

このあとはぜひ、読んでみてください。こころがほっこりあたたかくなります。

活版印刷三日月堂シリーズ


『活版印刷三日月堂 星たちの栞』
『活版印刷三日月堂 庭のアルバム』
『活版印刷三日月堂 海からの手紙』
『活版印刷三日月堂 雲の日記帳』
『活版印刷三日月堂』の舞台を訪ねて

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