2007.01.21 Sunday

「東福門院和子の涙」 宮尾 登美子

江戸時代初期。徳川家光の妹、東福門院和子は朝廷に幕府の権威を示すため、京都の朝廷に輿入れする。
なれぬ宮廷に戸惑いながらも、明るく愛らしい少女は、決して涙を見せなかった。枕の下の紅絹の布に涙を隠しながら…

物語は、輿入れから晩年まで東福門院に仕えた侍女、「ゆき」の視点で描かれている。

物語の最初に晩年の東福門院がゆきに、こんなことを言っている。
「人生の大半を京で過ごしたが、ゆきもわたしも、本当の京のひとにはなれなかったなぁ」
うろ覚えなのでセリフが少し違うかもしれないけれど。
いくら人生のほとんどを京都で過ごそうとも、どんなに努力をしようとも、「本当の京都人」になるのは難しいのかもしれない。
まあ、この方の場合、かなり特殊な環境下だったということもあるのでしょうが。

先日、学生時代を京都で過ごしたという人が、京都に詳しいと自慢していたが、本当の京都人から見たらきっと片腹痛いことだろう。「よそ者」かそうでないかは、本当の京都人にしかわからないのかもしれない。




宮尾 登美子 / 講談社
Amazonランキング:89839位
Amazonおすすめ度:
悲しみの先に
聖人のような
早くドラマ化を

2006.06.07 Wednesday

「白洲次郎 占領を背負った男」 北 康利

最近、白州次郎の関連本が人気だ。
戦後日本の復興を吉田茂の側近として支えるも、自らは決して表舞台に立たない清廉さが受けているのかもしれない。

吉田茂の側近としてGHQと渡り合い、
日本の復興に多大な功績を残した白洲次郎の伝記。
しかし、だだの伝記とあなどるなかれ。
英国留学時代には当時貴重だった高級車を何台も乗りまわし、
奥様(エッセイスト・白州正子)には英語でラブレターを送り、
占領時にもかかわらず最高指令マッカーサーを英語で叱りつけるなど破天荒なエピソードが満載。

ジーンズを日本で始めて履き、三宅一生デザインコートを着こなすなど晩年になってもおしゃれでダンディー。

戦後、誰もが進駐軍の影におびえていた中で白州次郎と吉田茂はアメリカに屈せず、孤高の戦いを挑んでいく。彼らにしてみれば敗戦後からが「本当の戦争」だったのだ。
英国留学経験を持ち、キングズイングリッシュを自在に話す白州さんにしてみればスラングまみれのGHQ高官などはこんな風な扱いになるわけだ(笑)
あるときGHQ高官に「英語がうまいね」といわれれば
「閣下も練習すれば、英語がうまくなりますよ」と切り返すこのユーモアと反骨。

残念ながら、こんな日本人は今は絶滅してしまった。
だからこそ、今「白州次郎」なのかもしれない。
白洲次郎 占領を背負った男 上 (講談社文庫)
白洲次郎 占領を背負った男 上 (講談社文庫)

白洲次郎 占領を背負った男 下 (講談社文庫)
白洲次郎 占領を背負った男 下 (講談社文庫)


NHKドラマ白州次郎 第1回「カントリージェントルマンへの道」→
NHKドラマ白州次郎 第2回「1945年のクリスマス」→
NHKドラマ白州次郎 最終回「ラスプーチンの涙」→
「白州正子自伝」→
JUGEMテーマ:人物伝


2006.02.17 Friday

「新とはずがたり」杉本苑子

鎌倉時代、後深草院につかえた女性・二条が宮中での愛欲を綴った「とはずがたり」。
海野つなみさんの漫画「後宮」のベースとなったお話ですが、過去にも杉本苑子さんが「とはずがたり」をモチーフに小説を書いています。

こちらは二条の恋人の一人、西園寺実兼の視点から描いた物語です。

新とはずがたり (講談社文庫)

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私は今まで二条って「男たちの愛憎にただ流される女性」という印象があったのですが、杉本苑子さんの二条はちょっと「ゆるふわ系」で何を考えているかわからないところがある女性として描かれています。

実兼に「野の花のごとき容貌」と例えられた少女は、やがて成長して実兼と上皇、その他、やんごとなき男たちから求愛されるものの、人生の愛憎を20代半ばで味わいつくし、晩年は出家をし、全国を旅する生活を選びます。

実兼さん、別れたあとでも二条の男との噂を聞いてはやきもきしたりしてたり、どうやら二条には不思議な魅力があるんですね。じゃなきゃ、やんごとなき方々が夢中になるはずもないので。

「とはずがたり」の人物達は貴族社会のトップにいる人たちで、仏教なんかも熱心に信心していたはずですが、現代人でもタブーと考えることを存外、平気でやってしまってます。御所さま(後深草院)なんて義理の妹に手を出したり、まったくm伏字にしないと書けないようなことばっかりだ。。

鎌倉時代の京の貴族達は政治の実権を幕府に握られているので、朝廷内での地位の確保と源氏物語に見立てた退廃的な恋愛ゲームしかやることがなかったのだと作者の杉本苑子さんは書いています。

確かに、二条と御所様は紫の上と光源氏にも例えられるし、御所様、二条、実兼様の三角関係は同じく匂宮、浮舟、薫のようでもある。女性が最後に出家して男たちの元を離れたのも同じ展開。

二条の人生の選択にも源氏物語の影響があったのか、もしかしたら、自分を源氏物語の「浮舟」になぞらえて男たちと決別したのかもしれません…。

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2006.01.13 Friday

「人斬り半次郎 幕末編・賊将編」 池波 正太郎

「新撰組!!」が終わってひと段落したので、今度は薩摩側からの幕末を読んでみたくなった。どうしても新撰組からみると薩長はずるくて嫌な連中としてイメージができてしまうので。。

「人斬り半次郎」は幕末、「人斬り」と恐れられた中村半次郎(後の桐野利明)の生涯を綴った物語。
貧困にあえぐ郷士の家に生まれながらも、「今にみちょれ!」と志を持ち剣術と畑仕事に精を出す青年時代。

やがて西郷隆盛に見出され幕末の世を駆け抜けてゆく。

美男、剣術で鍛えた立派な体躯、まっすぐな心根の持ち主。心酔する西郷と家族、恋人の前では「はぁい」とかわいらしい返事をする半次郎。敵に向かうときは鬼神のようだが、女に振られればおいおいと泣いたり、とにかく「かわゆい」オトコなのです。半次郎さん。

しかし、そのまっすぐ過ぎる心根ゆえか、西南戦争という大きな政局に巻き込まれてしまうのだが。。

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2005.12.19 Monday

永倉新八が観た新撰組 「幕末新撰組」 池波正太郎

「鬼平犯科帳」で有名な池波正太郎先生が描いた永倉新八の視点から見た「幕末新撰組」。
土方、近藤、沖田が主役で描かれた作品が多い中、永倉新八を主人公にした小説は珍しかったらしい。物語はやんちゃなこども時代から、試衛館の食客となり京へ上ってからの活躍と挫折、維新後、北海道での好々爺ぶりまでが描かれています。

松前藩江戸屋敷育ちの新八は、生粋の江戸っ子でやんちゃで、一本気な人。「新撰組!」でぐっさんが演じていたの新八とはまた違った印象で、口調はちゃきちゃきの江戸弁。どちらかといえば「新撰組!」で野田秀樹氏が演じたの勝海舟の口調にに近い。

とはいえ、一本気なところはぐっさんの新八とおんなじで曲がったことが大嫌い。
彼は最初から「武士」だったため、農民出身の近藤たちが当初の志から離れて「成り上がり」になっていったのに嫌気が差し袂を分かつが、維新後は新撰組隊士の碑を建てたり、記録を残したりと新撰組の汚名挽回に力を注いでゆく。

「新撰組!」では死んでしまった設定の恋人との間に女の子を授かり、親戚にあずけていたのを維新後30年近くたってから再会する時、えらく緊張してしまうかわいい一面や、孫と散歩していたときに、絡まれたやくざを一網打尽にするなど、年をとっても腕は衰えていなかったらしい。

池波先生は小説を書くときに永倉新八のお孫さん(やくざに絡まれた時一緒にいた)から直接聞き取りを行ったそうだ。やはり、幕末と現代はまだ少しの糸でつながっている。

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↓こちらは「ひ孫」の方々が出した本。こちらも面白そう。



JUGEMテーマ:時代小説

レビューポータル「MONO-PORTAL」

2005.08.30 Tuesday

「玉人」 宮城谷 昌光

古代中国を舞台にした短編恋愛編。
本当は、もっと女性がつらい目にあう酷な話ばかりだと思っていたけれど、全編を通じて女性に対する賛美や愛情が感じられる。宮城谷さんの作品は初めて読んだけれど、文章も難しい感じではなく読みやすい。
別の文庫の解説で宮城谷さんは中国の歴史小説を伝える「ことば」を探求した方だそうで、どの作品も難しい歴史背景を知らなくても人間ドラマとしても面白い。

それにしても、古代の女性は大変。良い夫に恵まれたとしても、夫が上司から「娘を嫁にもらえ」と言われたら、いままでいた妻は、正妻の座を後から来た上司の娘に渡さなければならないし、実家に帰されることもある。そうなればまた別のところに縁付かせられる。(条件が悪いときは妾として)

ちなみに、奥さんとなる人は実家から侍女または姉妹をつれて嫁に来る。それはいわば公認の妾で、実家との結びきが強くなるのため
奥さんも承知の上なんだそうな。

現代に生まれてて本当によかった。。

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文字を発明したとされる殷の王武丁の冒険譚「沈黙の王」→
古代中国の名宰相「華栄の丘」→
誕生!中国文明展→


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